家族信託を活用した不動産管理 | 売却方法や登記、税金についても解説

家族信託を活用した不動産管理 | 売却方法や登記、税金についても解説

家族信託した不動産に対して、「多額の税金がかかってしまった」というケースがあります。

家族信託とは、財産を家族に託し運用・管理・処分してもらう仕組みのことです。

家族信託の制度は難しく、一般の方では不動産・税金面に対する専門的な知識を理解するのは難しいでしょう。

本記事では、家族信託を効果的に活用して不動産を管理する方法や、信託した不動産の売却方法について解説します。また不動産登記の名義変更や発生する様々な税金についても、併せて紹介します。

目次

不動産管理における家族信託の仕組みを理解しよう

家族信託は、主に以下の3者によって構成されます。それぞれの役割は次の通りです。

  • 委託者:財産を預ける(信託する)人
  • 受託者:財産を預かり(信託されて)、管理・運用する人
  • 受益者:信託財産から生じる利益を得る人

ここからは不動産を所有している場合、家族信託をどう活用したら良いのか説明していきます。

家族信託では、不動産を信頼できる家族に託すことが可能

家族信託では委託者の判断能力が確かな間に、大切な不動産の管理を家族に託すことができます。

受託者は、「信頼に値する人物か」「委託者の意図をくみ取ってくれるか」といった要件を満たすことが望ましいです。
委託者からすれば、親族であれば誰でも良いわけではありません。

委託者は承継する不動産の管理・運用・処分能力だけでなく、自分のことを大切にしてくれるかを基準にして、受託者を選ぶことができます。

任意後見制度では、本人が十分な判断能力を有しているうちに、あらかじめ次のことを公正証書による契約で定めておきます。

  • 任意後見人となる人物
  • 将来その人物に委任する事務の内容

任意後見制度は、本人の判断能力が不十分になってしまった後に、前もって定められた任意後見人が委任された事務を本人に代わって行う制度です。

任意後見制度の下で任意後見人は、財産管理に関する法律行為として、あくまで本人の医療費・生活費等をねん出するため、不動産の売却など財産の処分を行うことができます。

家族信託を利用して不動産を管理する4つのメリット

家族信託を利用して不動産を管理する4つのメリット

家族信託を利用すると、信託契約書の内容で受託者に権限を定めておけば、不動産の売却なども可能になります。

将来、委託者に様々な費用が発生するときに備えて、受託者に対し、不動産の管理・運用・処分についての幅広い権限を与えておくことで費用面で負担をかけずにすむことになります。

認知症を発症しても不動産を管理・売却できる

認知症を発症して正常な判断能力が失われると、不動産の賃貸・売却などの契約行為ができなくなります。

委託者が元気なうちに、子ども・親族を受託者として家族信託契約を締結しておくことにより、もしも認知症になった場合には、受託者が不動産の賃貸や売却などを含む管理・運用・処分をすることが可能になります。

日本では、年々少子高齢化が進んでいます。家族信託を利用することは、認知症の発症リスクに対する有効な対策のひとつになると考えられます。

不動産を相続する人を孫の代まで決められる

遺言による不動産相続の場合、親は子どもへ相続させることはできますが、孫世代まで相続先を決めることはできません。

家族信託では、不動産の承継を子どもだけでなく、孫世代までの指定も実現できるようになりました。

家族信託は、子どもが死亡した後に信託不動産を孫に渡すことを指定できる柔軟性の高い手法です。

不動産共有によるトラブルを回避できる

不動産を共有名義にすると、共有者全員の同意がなければ売却などの処分をすることができません。

相続により不動産を共有することになった場合、共有者間の意見の相違により、本来得られるはずの収益を手にすることができない「塩漬け」などのトラブルが発生する可能性があります。

家族信託の利用により1人を受託者として選び、不動産の管理・運用・処分を任せることで不動産共有によるトラブルを回避できます。

管理や運用の自由度が高い

家族信託での不動産の管理や運用について、任意後見制度と比較して解説します。

任意後見制度は本人の判断能力が低下した場合、あらかじめ本人が選んだ任意後見人に対して、代わりにしてもらいたいことを契約で決めておくものです。

本人の判断能力が低下した場合に、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されて初めて任意後見契約の効力が生じます。

任意後見制度では、介護施設への入居費用など急な出費が必要になった場合でも、任意後見を開始するには家庭裁判所での審判が必要です。

その点家族信託では、急な出費が必要な場合には不動産を信託の目的の範囲内で管理・処分できるため、管理や運用の自由度が高いといえます。

不動産を家族信託するデメリット・注意点もチェック 

不動産を家族信託するデメリット・注意点もチェック 

不動産を家族信託することで、すべてが上手くいくというわけではありません。

以下では、主なデメリットを4つ挙げて解説します。デメリットも十分に考慮した上で、家族信託の利用を考えてください。

手間や費用がかかる

家族信託の契約内容に建物が含まれている場合には、受託者に対し、建物を適正に管理する義務が生じる点に注意が必要です。

特に、新築でなく一定の年数が経過した建物であれば管理を怠れません。建物の老朽化による倒壊などで、通りすがりの歩行者に怪我をさせることのないよう定期的なチェックを行うといった「管理面での手間」がかかります。

また、信託契約書の作成などを専門家に家族信託を依頼する場合、専門家に支払う費用が発生します。費用について現在のところ統一された報酬基準は設けられていませんが、決して安いものではありません。

不動産の家族信託にかかる費用と内訳を紹介

家族信託を司法書士・弁護士などの専門家に依頼した場合は、約50~100万円の費用がかかるといわれています。目的や財産内容によっては100万円を超えることもあります。

内訳内容費用
相談、コンサルティング料
信託財産の価格によって異なります。
約30~80万円
公正証書作成手数料約3~10万円
登録免許税
信託財産に不動産が含まれている場合
不動産価格の1,000分の4に相当する額(相続の場合)
信託登記を依頼する場合の報酬約10~15万円
不動産の家族信託費用の内訳の一例

家族間でトラブルが起こる可能性がある

不動産を家族信託する場合、不動産の管理・運営・処分を家族のうちの誰かが受託者として任されることになります。

家族信託を契約した際に「家族全員が説明を聞かず受託者だけが理解していた」ケースや、不動産の管理・運営・処分を適切に行ってはいたが「家族に事前に報告するなど説明をせず、意志疎通が取れていなかった」ケースでは、家族間でトラブルに発展する可能性があります。

トラブルを発生させないためには家族信託した不動産について、受託者ではない家族が十分に理解していることや、受託者と家族とのコミュニケーションが取れていることが必要です。専門家から家族に説明してもらうことも大切です。

税金対策としての効果は期待できない

家族信託は、柔軟な財産管理により円滑な不動産などの承継を行うことができます。
ただし、家族信託の仕組みそのものには、税金対策としての節税効果は期待できません。

税金は、基本的に受益者に着目して課税されます。受益者の受益権から収益が得られるなら、収益を得た人物に所得税が課税されます。

死亡が原因で権利の移転が起これば相続税が課税され、対価なく贈与を受ければ贈与税が課税されます。このように受益者が変わったときには、その原因に応じて税金が課されます。

他の所得との損益通算ができない

不動産所得などは、所得金額の計算上損失が生じた場合には、損失計算の対象となる所得です。

しかし、賃貸不動産などからの不動産所得のある方が家族信託を選択した場合には、賃貸不動産の収益性が下がって損失が生じたとしても、他の不動産所得との損益通算を行うことができません。

家族信託を締結する前に、税理士などの専門家と相談しておくことをおすすめします。

不動産を家族信託する流れを解説

不動産を家族信託する流れを解説

近年、柔軟な財産管理ができる家族信託の制度が注目されています。

家族信託を上手く利用することにより、委託者の不動産の管理・運用・処分などに柔軟に対応することが可能です。ここからは、不動産を家族信託する流れについて解説します。


①家族や親族間で話し合って家族信託の内容を決める

認知症への対策、障がいのある子どもの生活を支える、不動産の承継先を決める、など家庭によって家族信託の目的や形は様々です。

目的が不動産の承継である場合は、先祖代々譲り受けてきた土地に対する思い入れが強いことも少なくないでしょう。

このような土地の承継先などは、信託に関わる家族全員で話し合い、合意を得ることが必要です。

②公正証書としての信託契約書を作成する

家族信託では、公正証書により信託契約書を作成します。いわゆる私文書による契約書でも契約は成立するものの、信託口口座の開設や、不動産売却時に備えて公正証書による作成が望ましいです。

信託財産や依頼内容により必要書類は異なりますが、公正証書作成には一般的に以下の書類が必要になります。

公正証書作成に必要な書類
  • 実印、印鑑証明書(委託者・受託者のもの)
  • 不動産の登記事項証明書(法務局発行)と固定資産評価証明書(市町村発行)
  • その他対象となる不動産を特定するために必要な書類や本人確認書類など

これらの書類は、以下の手続きでも必要となるものです。

③該当する不動産登記の名義変更を行う

家族信託の信託契約書を作成した後、不動産の名義を委託者から受託者へと移すことになります。

不動産が信託された旨の「所有権移転及び信託登記」を法務局に申請します。

申請時には、どの不動産の名義変更を行うのかが分かるように、信託財産の一覧表である「信託目録」を作成しておきます。

④信託用の口座を開設する

家族信託では、財産管理のための専用口座を開設し、開設した口座に信託財産を入金して分別管理します。

家族信託する不動産が収益性のある不動産であれば、賃料などの振込先口座も信託用口座に変更しなければなりません。

また、該当する不動産の名義変更を行うことにより、信託した固定資産税の納税義務者も受託者に変わります。

固定資産税の納税義務者は、賦課期日(毎年1月1日)時点の所有者です。

登記が終了した翌年には受託者宛に納税通知書が届くようになります。受託者は、信託財産から納税資金を用意することになります。

家族信託後も不動産の売却は可能! 方法や注意点は? 

家族信託後も不動産の売却は可能! 方法や注意点は? 

家族信託後の不動産は受託者が売却することも可能です。家族信託契約を締結した時点で、委託者は受託者に不動産の運用・管理・処分を任せることになるためです。

委託者が将来的に認知症を発症した際の対策として、家族信託は有効な手段となっています。

家族信託した不動産を売却する方法2つを詳しく解説

家族信託した不動産を売却するのは、次の2つの方法があります。

  • 不動産自体を売却する方法
  • 受益権(財産権)を売却する方法

ここでは、それぞれの方法について具体的な内容を解説します。

不動産自体を売却する方法 


不動産自体を売却する場合は、通常の不動産の売却とほぼ同じ手順です。所有者である委託者が売主でなく、受託者が売主となる点が異なります。不動産の売却で得た利益は、信託財産となります。

前提条件として、信託契約条項に信託不動産の売買が含まれていれば、信託の目的に沿って受託者が売主となり信託不動産を売却することが可能です。

受益権(財産権)を売却する方法 

受益権(財産権)は、信託財産の管理・運用・処分から得られる利益を受ける権利です。一例として、委託者である親から賃貸マンションを受託者である子どもが受託して、子どもがマンションの管理をすることで発生した利益を享受する権利です。

受益者が売主となって、受益権(財産権)の対価として信託不動産の売買相当額を金銭で得ます。受託者は、売却後も信託財産を引き続き管理しますが、信託財産から得られる収益は受益権(財産権)を持つ買主へ渡すことになります。

相続対策などの一環として、不動産自体ではなく受益権を子どもや同族法人へ売却する場合があります。

家族信託した不動産を売却する場合の注意点

家族信託した不動産を売却する場合、売却前に不動産登記の内容をしっかり確認しておく必要があります。

金融機関から融資を受けたことがあれば、物的担保として金融機関が抵当権を設定していることもあるためです。

金融機関により抵当権が設定されている不動産の場合は「金融機関の承諾を得ることなく、担保不動産を第三者に移転できない」旨の金銭消費賃借契約条項が入っています。

金融機関に相談し、同意を得なければ不動産を売却することはできません。
抵当権を解除する条件は、金融機関・融資金額により異なることがあります。

判断できない場合には、専門家へ早めの相談をおすすめします。

不動産の家族信託で発生する税金をチェック

不動産の家族信託で発生する税金をチェック

税金は、利益に着目して課税されるものです。

ここでは、家族信託で不動産を信託財産とした場合に発生する税金について説明します。委託者・受託者・受益者のそれぞれに課される可能性のある税金について順番に紹介します。

課税される可能性は個々の事例により異なるため、税務署の判断となります。ここでは参考に留め、少しでも疑問があれば税理士に相談することが大切です。

委託者(不動産を任せる人)にかかる税金

家族信託では、委託者に対し課される税金はありません。ここでは、委託者が関係する「自益信託」と「他益信託」の事例について簡単に説明します。

自益信託(委託者と受益者が同一人物の信託)の場合、信託の効力が生じた前後において、信託財産から利益を受ける人が変わらないため、受益者に贈与税は発生しません。

また、他益信託(委託者と受益者が同一人物でない信託)の場合、信託の効力が生じた前後において、信託財産から利益を受ける人が異なるため受益者に贈与税がかかります。

受託者(不動産を信託される人)にかかる税金

受託者には、次の2種類の税金が課される可能性があります。

登録免許税

不動産が信託財産に含まれている場合は、不動産について「信託による所有権移転及び信託の登記」を行うことになります。信託の登記では最初の登記時点で課税され、信託を終了する時点でも不動産を受け継ぐ人に対して2度目の課税がなされます。(信託不動産を受託者から引き継ぐ人に対しての所有権移転登記が必要なため)

固定資産税

毎年1月1日現在の不動産所有者に対して課税されます。
不動産が信託財産に含まれている場合は、受託者が形式的な所有者となるため、受託者に対し課税されることになります。

受益者(実際に利益を受け取る人)にかかる税金

受益者には次の4種類の税金が課される可能性があります。
(委託者と受益者が同一人物である場合には、委託者には受益者として課税されます。)

贈与税

委託者と受益者が同一人物である場合は、基本的には課税されませんが、場合によっては課税されることもあるので専門家への確認が必要です。

相続税

相続が発生した時点において、受益者の地位を継承する2次の受益者に対し課税されます。

譲渡所得税

受益者が受益権を売却した場合は、発生した利益に対し課税されます。土地や建物の譲渡による所得では、他の所得と合計せず「分離課税制度」となります。

所得税・住民税

収益性のある不動産からの賃貸収入などに対し課税されます。

不動産の家族信託は専門家に依頼するのがおすすめ

不動産の家族信託は専門家に依頼するのがおすすめ

今回は、家族信託を活用した不動産管理について説明しました。

家族信託を利用して不動産を売却する際には、登記や税金の高度な専門知識と実務経験が必要になります。

不動産登記であれば司法書士、税金であれば税理士に相談すべきです。

専門家の意見を取り入れた上で、家族信託を活用した不動産の管理について検討することが良い選択に繋がります。

ファミトラでは、家族信託での不動産については信託財産であることを対外的に明らかにするため、信託の登記を行います。登記や税金の専門家と連携し、お客様をサポートいたします。

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この記事を書いた人

小牟田尚子 小牟田尚子 家族信託コーディネーター®

化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。

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