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相続時精算課税制度をわかりやすく解説!利用するメリット・デメリットもご紹介

相続時精算課税制度をわかりやすく解説!利用するメリット・デメリットもご紹介

「相続時精算課税制度」とはどういう制度か知っていますか?

相続時精算課税制度とは、一定の条件下のもと2,500万円までであれば贈与税を納めずに財産を受け取れる制度のことです。

この制度をうまく活用することで、早い段階で財産贈与ができるほか、場合によっては贈与税を軽減できるなどの恩恵を受けられます。

とはいえ、いくつかのメリットがある一方で、利用を検討する前に知っておくべき注意点もあります。

そこで今回の記事では、相続時精算課税制度を利用するメリットやデメリット、計算方法などについてご紹介します。

この記事の監修者

瀧田 潤
(たきた じゅん)
税理士

2005年税理士試験合格。都内3カ所の会計事務所、税理士法人勤務を経て、2017年に独立開業。特に独立前の税理士法人では相続・事業承継の責任者として活躍し、その当時から現在に至るまで毎年100件以上の相続関連の相談を受けている。税金で損をしている方を一人でも多く減らすことをモットーに「日本一相談のしやすい税理士」を目指して日々邁進中。

目次

相続時精算課税制度の概要

まずはじめに、相続時精算課税制度の概要や仕組みについて解説します。

相続時精算課税制度とは

「相続時精算課税制度」は、2,500万円までであれば贈与税を納めずに贈与を受け取れる制度のことです。

この制度は60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与の際に、納税者となる子・孫の選択により利用できます(※)。

通常の贈与は「暦年贈与」と呼ばれ、贈与税がかからない非課税枠は年間110万円までであるため、一度に大きな額を非課税で贈与できるのは相続時精算課税制度の大きな特徴といえるでしょう。

しかしその一方で、贈与者が亡くなったときには「贈与者から受け取った贈与財産」と「その他の相続財産」を合計して相続税額を計算しなければならない点に注意が必要です。

相続時精算課税制度を選択する場合、受贈者はその選択をした最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署長に対して贈与税の申告書とあわせて制度の届出書も提出しなければなりません。

また、相続時精算課税制度を選んだ時点から暦年贈与を選択することができなくなることも覚えておきましょう。

制度の利用を検討する時は専門家に相談するなどしながら、慎重に選択することが大切です。

※成人年齢の引き下げにより、贈与が令和4年4月1日以後の場合は、贈与を受ける子や孫が18歳以上であれば適用できるようになります。(以下同じ)

どんな状況の人が相続時精算課税制度の利用に向いているの?

制度利用に向いている人
  • 子や孫の起業または住宅取得のために、一時にまとまった資金を贈与したい場合
  • 贈与対象の財産の評価額が将来確実に上昇すると見込まれる場合
  • 将来の相続財産と合計した場合でも合計額が基礎控除額以下であり、早期に財産を子や孫に移転したい場合

など

上記以外のケースで利用する場合には、贈与時は2,500万円までは非課税ではあるものの、相続時に相続財産と合算され相続税を支払う必要が出てくる可能性があります。

相続時精算課税制度はあくまでも税金の支払いを先延ばしにするだけであり、税金の免除とはならない点に注意しましょう。

適用される対象者

相続時精算課税制度の適用対象となる条件は次の通りです。

適用対象者
  • 贈与者:贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母
  • 受贈者:贈与を受けた年の1月1日において20才以上の者のうち、贈与者の子や孫

(成人年齢の引き下げにより、贈与が令和4年4月1日以後の場合は、贈与を受ける子や孫が18歳以上であれば適用できるようになります。)

また、養子も一親等の血族である推定相続人であることから、人数に制限なく相続時精算課税制度の対象者となります。

適用される財産

相続時精算課税制度が適用される財産、金額、贈与回数に制限はありません。(みなし贈与財産も含まれる)

また、受贈財産は相続開始時に無価値になっていたとしても「贈与した時点での価額」で相続税が計算されます。

そのため、財産を選択する際は価格変動の影響も考慮したうえで、相続時までに評価額が上がりそうなものを選ぶとよいでしょう。

評価額が上がりそうなものの具体例としては、土地や株式などが挙げられます。

暦年贈与との違い

贈与を受けた際に受贈者が相続時精算課税制度を選ばなかった場合、「暦年贈与」が適用されます。

この二つの課税制度にはどのような違いがあるのでしょうか。

大きな違いは次の通りです。

  • 暦年贈与:長期にわたって毎年110万円以内の金額を無税で贈与可能
  • 相続時精算課税制度:一時期に2,500万円以内の金額を贈与できる

また、暦年贈与と相続時精算課税制度には他にも次のような違いがあります。

暦年贈与相続時精算課税制度
贈与者の要件特になし贈与をした年の1月1日時点で60歳以上である父母または祖父
受贈者の要件特になし贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上の推定相続人および孫
非課税枠受贈者あたり毎年110万円贈与者ごとに累計2,500万円まで
控除額以下の場合の届出等不要
控除額超の贈与税超過累進税率一律20%
相続税の課税対象相続前3年内限定
(贈与時の価額)
全て相続税の対象
(贈与時の価額)
回数制限なし。
ただし、相続時精算課税制度を選択すると利用不可。
なし。
一度選択すると暦年贈与に戻れない。

両制度の違いをきちんと理解したうえで、慎重に判断しましょう。

相続時精算課税制度利用時の贈与税の計算方法

相続時精算課税制度の特別控除額は最大2,500万円です。

そのため、その金額までの贈与は一律非課税となります。

また、この制度は利用の申請をしてから贈与者(財産を贈与する父母や祖父母)がなくなるまでの間、合計の控除額が2,500万円に達するまでは何回でも利用可能です。

まず、基本的な贈与税額の計算式について見ていきましょう。

贈与税額=(贈与財産の価額-特別控除額)× 20%

この算式を踏まえたうえで、相続時精算課税制度を選択した贈与者から次のように贈与を受けた場合について解説します。

【前提】1年目に1,200万円、2年目に800万円、3年目に600万円の贈与を受けた

  • まず1年目は、贈与の額が特別控除額2,500万円を下回っているため、贈与税は生じません。
  • 次に2年目ですが、累積の贈与額(1,200万円+800万円)が特別控除額未満であることから、前年に引き続き贈与税の発生はありません。
  • 3年目になると累積の贈与額(1,200万円+800万円+600万円)が特別控除額の2,500万円を超えるため、超えた額に対して贈与税が課税されます。

(2,600万円-2,500万円)× 20%=20万円(贈与税額)

また前述したように、この制度を選択した場合、以後は暦年課税の適用ができません

そのため、4年目以降にも同じ贈与者からの贈与があった場合、贈与財産額が110万円以下であったとしても贈与税の納税が生じる点に注意しましょう。

相続時精算課税制度のメリット

相続時精算課税制度の概要につづき、ここでは主なメリットを2つご紹介します。

  • 2,500万円までなら非課税で贈与できる
  • 早い段階で財産贈与ができる

さっそく見ていきましょう。

2,500万円までなら非課税で贈与できる

相続時精算課税制度を選ぶ最大のメリットは、2,500万円という大きな控除を受けられることです。

普通の贈与(暦年贈与)を選択した場合、暦年贈与の控除は年間で110万円までしか適用されません。

また、暦年贈与の場合は贈与額が大きくなるにつれ、以下のように税率が上がっていきます。

<一般贈与財産用>(一般税率)

基礎控除後の課税価格200万円以下300万円以下400万円以下600万円以下1000万円以下1500万円以下3000万円以下3000万円超
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円

<特例贈与財産用>(特例税率)

基礎控除後の課税価格200万円以下400万円以下600万円以下1000万円以下1500万円以下3000万円以下4500万円以下4500万円超
税 率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円30万円90万円190万円265万円415万円640万円

※20歳以上の人が直系の父母や祖父母から贈与を受けた場合、特例税率が適用される。(それ以外の場合は一般税率となる)

出典:国税庁HP

短期間で大きな金額を移動させたい場合や、定期的に収益のある不動産を持っている人などは相続時精算課税制度を利用するとよいでしょう。

ただし、1人の贈与者について、相続発生時までに贈与できる金額の上限は2,500万円までです。

そのため、ある年に1,500万円の贈与をした場合、翌年以後は1,000万円の控除しか受けられない点に注意が必要です。

早い段階で財産贈与ができる

相続時精算課税制度ができた背景には、両親や祖父母の財産をなるべくスムーズに子や孫へ相続させ、消費を促したいといった考えが含まれています。

そのため、この制度を利用することで、受贈者となった子どもや孫が自分たちのタイミングで相続した財産を有効に活用できるでしょう。

また、暦年贈与で毎年まとまった金額で贈与を繰り返していると、定期贈与とみなされて課税される恐れもあります。

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

  • 暦年課税を選択できなくなる
  • 小規模宅地などの特例が利用できない
  • 手続きをするのに手間がかかる
  • 不動産の場合はコストがかかる
  • 贈与の累計が2,500万円を超えると贈与税がかかる

上記についてもひとつずつ確認していきましょう。

暦年課税を選択できなくなる

相続時精算課税制度の最大のデメリットは、一度でも利用を選択すると暦年贈与を選べなくなることです。

相続時精算課税制度を選んだ場合、年間110万円の暦年贈与非課税枠が一生使用できなくなってしまいます。

まだ相続するのが遠い先の話である場合、暦年贈与を選択しておくと良いでしょう。

とはいえ、暦年課税の非課税枠(110万円)が使用できなくなるのは「相続時精算課税制度を利用した贈与者からの贈与」であり、他の贈与者からの贈与については適用可能です。

利用する前に「相続時精算課税制度」と「暦年課税制度」のどちらが得なのか、よく考えたうえで届出書を提出するようにしましょう。

小規模宅地などの特例が利用できない

相続時精算課税制度を選択し、住宅などの宅地等(土地や敷地権)の贈与を受けた場合、「小規模宅地等の特例」を使うことができません

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす状況で宅地等を相続した場合に、その宅地等の相続税評価額が最大80%減額される制度のことです。

この特例で対象となるのは相続や遺贈によって受け取った土地のみであり、贈与で受け取った土地は適用対象外となります。

上限面積や減額割合、要件は土地の用途によって異なりますが、引き継ぐ土地の種類によっては相続時精算課税制度を利用するよりも節税に繋がる可能性があります。

相続税が課税される可能性がある

相続時精算課税制度は、2,500万円を上限として贈与税が非課税となる制度でした。

しかし、将来的に贈与者の相続が発生した際、制度を選択した贈与財産(2,500万円まで)を相続財産に足し戻す必要があります。

その際、足し戻した場合の総額が相続税の基礎控除を超えてしまうと、相続税の課税対象となります。

また、受贈者が孫で相続税が課税されるケースでは、孫は相続税の2割加算の対象となることも覚えておきましょう(代襲相続によって孫が法定相続人となる場合を除く)。

手続きをするのに手間がかかる

通常の相続であれば、税金の手続きは一回のみです。

しかし、相続時精算課税制度を選択すると手続きに対してそれなりの手間と費用が生じます。

また、相続が発生した際は相続税の申告をしなければならないほか、2,500万円を超えても毎回申告する必要があります。

不動産の場合はコストがかかる

不動産を生前に贈与した場合、贈与税や相続税以外に「登録免許税」や「不動産取得税」といったコストが生じます。

通常の相続であれば登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)のみで、不動産取得税はかかりません。

しかし、生前贈与の場合は登録免許税(固定資産税評価額の2.0%)に加え、不動産取得税(固定資産税評価額の3.0%)がかかるので注意しましょう。

贈与の累計が2,500万円を超えると贈与税がかかる

相続時精算課税制度では、贈与額が2,500万円を超えた場合に、超えた額に対して一律20%の贈与税が課税されてしまいます。

そのため、仮に4,000万円の贈与がなされた場合、以下の税額が課税されます。

(4,000万円-特別控除2,500万円)× 20%=300万円

ただし、贈与税は相続時に相続税額から差し引かれるため、相続税額が少ない場合は差額が還付されることも覚えておきましょう。

制度の利用時における贈与税と相続税の税額の計算方法

贈与税額の計算

贈与税の計算は以下の方法で行います。

① その年の1月1日から12月31日までの1年間の間で受けた贈与財産の価額を合計します。
② その合計から基礎控除額の110万円を差し引きます。
③ 残りの金額に税率を乗せて税率を計算します。
     しかし、贈与による財産の価額の合計が年間で110万以下の場合贈与税はかかりません。
  ≪贈与税の計算式≫
贈与税=(贈与財産の合計-110万円(基礎控除額))×税率-控除額

相続税の速算表はこちらからご参照ください

特例贈与

父母や祖父母が贈与者となり、その年の1月1日において18歳以上となる方や20歳以上の孫への贈与は特例贈与といい、税率が異なります。つまり直径専属からの贈与のことを指します。

相続税対策として活用できるのか

「結局のところ、相続時精算課税制度は節税対策になるのか?」といった疑問をお持ちの方も多いかもしれません。

結論から言えば、相続時精算課税制度は節税対策になるというわけではありません

「相続時精算課税制度の概要」の中でも述べたように、相続時精算課税制度は、贈与税が非課税になるものの相続税は課税され、税金の先送りにしかならないからです。

しかし、アパートなどの収益不動産を所有している場合、また値上がりが予想される財産を所持している場合には、相続時精算課税制度を利用することで節税効果が見込めます。

相続時精算課税制度を選択して収益物件を贈与した場合、贈与者の相続時に相続税の課税対象となるのは収益物件のみです。

つまり、収益物件から生じた家賃収入等の収益を相続税に含める必要がありません

この制度を使わず、両親や祖父母が収益物件を所持したまま相続が発生してしまうと、「収益物件+家賃収入」が相続財産として課税対象となってしまいます。

そのため、賃貸アパート・マンションなどの収益物件がある場合には、相続時精算課税制度を選択して相続税対策をするのも一手かもしれません。

相続時精算課税制度のメリットを活かして利用しよう

今回の記事では、相続時精算課税制度の概要をはじめ、メリット・デメリットについてお伝えしました。

相続時精算課税制度のメリットとして、2,500万円までなら贈与税が非課税となるほか、早い段階で財産贈与ができることが挙げられます。

対するデメリットとして、一度選択すると暦年贈与ができないことや、相続するのに手間やコストがかかることをお伝えしました。

利用を検討する際は、両制度のメリットとデメリットを比較したうえで、自分にとってメリットがどれだけあるのかを把握することが大切だといえるでしょう。

相続対策について悩んでいる場合は「家族信託」の利用を検討するという方法もあります。

家族信託を利用することで認知症発症前の元気なうちから財産管理ができるほか、二次相続以降の相続人まで契約の中であらかじめ指定可能です。(遺言では二次相続ができない)

相続による遺族の負担を軽減したいと考えている方は、家族信託の活用も視野に入れるとよいでしょう。

ファミトラでは相続にまつわるご相談も受け付けております。家族信託に限らず、お客様のご状況に合わせて幅広くご提案・サポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

小牟田尚子 小牟田尚子 家族信託コーディネーター®

化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。

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