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認知症などで判断能力が低下した際に、本人の生活を支援する制度の1つに「成年後見制度」があります。
成年後見制度についての理解を深めることで、いざ家族が認知症などになった際に落ち着いて対応できるでしょう。
そこで、本記事では成年後見制度について、メリットや注意点について解説します。
本人の生活を支援する役割を担う成年後見人の選び方についても解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
成年後見制度とは、認知症などにより意思能力が低下・喪失してしまった人に代わり、財産管理・契約手続きなどの法律行為や、生活を支えるためのサポートを行う制度です。
意思能力が十分でなくなってしまうと、預貯金の引き出しや不動産の売却といった財産管理を行うことが難しくなります。また、介護施設への入退去手続き、医療機関への入院手続きや、それに伴う費用の支払い、契約行為なども、自分自身で行うことは難しくなります。
「自分の行為によって、どのような不利益(または利益)が生じるか」の判断を下すことができなくなります。そのため、本人が知らず知らずのうちに不当な契約を結んでしまったり、オレオレ詐欺のような悪徳商法に引っかかったりしてしまい、無駄な費用を費やし、財産を失ってしまうことがあるかもしれません。
成年後見制度は、こうした事態に陥って本人が不利益を被ることがないよう、本人に代わって財産の管理・保護、生活の支援をすることを目的として作られた制度です。
成年後見制度ができる前にも、意思能力が低下した人や浪費癖のある人の財産管理を行う制度として、禁治産制度・準禁治産制度の2つの制度がありました。
禁治産制度・準禁治産制度の適用を受けると、戸籍に禁治産者・準禁治産者と記載されていました。
しかし、戸籍に禁治産者・準禁治産者と記載されることで、差別や偏見を生んでしまうのではないか、という懸念や、より個人を尊重した制度に変えるべきとの意見が出たことから制度が見直されます。
そして、2000年の民法改正で、成年後見制度ができるに至りました。
成年後見制度と似たような制度に家族信託があります。
成年後見制度と家族信託の最大の違いは、制度を利用可能なタイミングです。
成年後見制度は本人の意思能力が喪失した後になってはじめて利用可能ですが、家族信託は本人の意思能力喪失前から利用できます。
成年後見制度は、本人の意思能力の喪失後に利用する制度です。
一方、家族信託は本人の意思能力の喪失前しか利用できないため、本人の意思能力の喪失を見込んで、前もって申し立てしなければいけないことを理解しておくと良いでしょう。
成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類に分けられます。
「本人に代わって財産を保護・管理し、生活面のサポートをする」という根本的な趣旨はどちらも同じですが、この2つには大きな違いがあります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
「法定後見制度」は、本人の意思能力が既に低下・喪失してしまった場合に、家族などが家庭裁判所に申し立てをすることにより、後見人を選任してもらう制度です。
法定後見制度は、本人の意思能力の程度により、「後見」「保佐」「補助」の3つに分けられます。
基本的に身の回りのことが何もできない状態を指します。財産管理や契約行為はもちろん、日常的な買い物に至るまで、誰かのサポートを必要とするケースです。
「後見人」に選ばれた人は、財産管理など全ての法律行為に対して、「代理権(本人に代わって、契約などの法律行為を行う権限)」や、「取消権(本人が行った法律行為を取り消すことができる権限)」が与えられます。
日常的な買い物などは問題なくできるけれど、財産に関する重要な行為(預貯金の引き出し、不動産の売却、自宅の増改築など)については、誰かのサポートを必要とするケースです。
「保佐人」に選ばれた人は、「同意権(本人が行った行為に対して同意する権限)と「取消権」が与えられます。本人が保佐人の同意を得ずに行った行為で、本人にとって不利益になる場合は、この行為を取り消すことができます。
保佐人に「代理権」は与えられませんが、必要に応じて家庭裁判所から認められた特定の行為についての「代理権」が与えられることもあります。
基本的に問題なく日常生活を送ることができるけれど、財産に関する重要な行為(預貯金の引き出し、不動産の売却、自宅の増改築など)を1人で行うには少し不安があるため、誰かにサポートしてもらった方が良いというケースです。
「補助人」に選ばれた人は、保佐人と同様「同意権」「取消権」と、必要に応じて、家庭裁判所から認められた特定の行為についての「代理権」を与えられることがあります。
※ただし、補助人が持つことのできる同意権(取消権)は保佐人に与えられるそれよりも限定されています。
法定後見制度を利用する場合、家庭裁判所に「後見開始の審判」の申し立てを行います。 意思能力が低下し被後見人となる人の住所を管轄する家庭裁判所が、申し立て先です。
申し立ては誰でもできるわけではなく、本人・配偶者・四親等内の親族・検察官又は市町村長などに限られています。
申し立ての際には、「医師の診断書」が必要です。「後見」「保佐」「補助」の3つのうち、どの類型になるかを最終的に判断するのは家庭裁判所になるため、医師の診断書は、本人の意思能力の程度を家庭裁判所に示す上で重要な書類です。 診断書の他、必要書類(住民票や財産目録など、家庭裁判所のHPで公開されています)を揃えたら、郵送又は窓口にて申し立ての手続きを行います。
申し立て後は、家庭裁判所の調査官が、提出した書類の内容をもとに、申立人や本人、親族などの関係者と面談を行い、意思能力を含め本人の生活・財産状況を確認します。 その調査内容を踏まえて、後見人が選任されるのです。
申し立てから選任されるまで、少なくとも 2〜4カ月の期間を要します。事案によってはもっと時間を要する場合もあるでしょう。
法定後見制度の利用には、法定後見人の選任のための費用が必要です。
法定後見人の選任には、主に以下のような費用がかかります。
鑑定料とは、専門家により成年被後見人の判断能力を確認してもらう時にかかる費用です。
また、必要に応じて司法書士に手続きなどを依頼する場合、10〜20万円ほどの費用が必要な上、利用開始後は成年後見人に毎月2〜6万円ほどの報酬を支払う必要があります。
「任意後見制度」は、本人の意思能力があるうちに、将来起こりうる資産凍結問題に備えて、自分の意思で後見人を選定しておくことができる制度です。
依頼をする本人(委任者)と任意後見人になる予定の人(任意後見受任者)は、「任意後見契約」を、「公正証書」により締結します。契約締結にあたって、本人は、将来意思能力が低下・喪失した後の財産管理方法や、介護・医療に係る事務的な手続き内容を自由に決めることが可能です。
前述した法定後見制度は、「本人の意思能力が低下・喪失した後」から手続きが開始されるのに対し、任意後見制度は、「本人の意思能力が低下・喪失する前」に、あらかじめ手続きをするという点で大きな違いがあります。「誰を任意後見人として選ぶのか、何を依頼するのか」を、事前に決めておくことができるという点も、この制度の大きな特徴と言えるでしょう。
しかし、任意後見をスタートさせる時は、家庭裁判所によって必ず「任意後見監督人」が選任されます。
任意後見監督人は、任意後見人が後見制度を悪用して、被後見人本人にとって不利益となるような財産管理・処分などを、好き勝手に行うことを防ぐためにチェック・監督する役割です。
任意後見制度は、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任したときから効力が生じることになるため、利用する際には法定後見制度と同様に、申し立ての手続きを行う必要があります。
任意後見契約締結後、任意後見制度を利用する場合、家庭裁判所に「任意後見監督人選任の審判」の申し立てを行います。申し立て先は、法定後見人制度と同様、被後見人となる人の住所を管轄する家庭裁判所です。
申し立ては誰でもできるわけではなく、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者に限られています。また、本人以外が申し立てを行う場合には、原則として本人の同意が必要です。
申し立ての際は、「申立事情説明書」や「医師の診断書」「住民票」など、家庭裁判所のHPで公開されている必要書類を揃えて、郵送又は窓口にて申し立て手続きを行います。
その後、家庭裁判所の調査官が、提出した書類の内容をもとに、申立人や本人、親族などの関係者と面談を行い、意思能力を含め本人の生活・財産状況を確認します。 その調査内容を踏まえて、任意後見監督人が選任されるのです。
任意後見制度を利用するには、以下の費用がかかります。
手続きを司法書士に依頼する場合、10〜15万円ほどの費用が必要です。
加えて、任意後見人・任意後見監督人への報酬もそれぞれ月額1〜6万円を支払う必要があります。
任意後見人との合意があれば報酬を0円にできますが、任意後見監督人への報酬は裁判所により決められるため、0円になることはないでしょう。
後見人になるために必要な資格などは特にありませんが、下記のように、民法第847条で「後見人の欠格事由」というものが定められています。
第八百四十七条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
これらの事由に当てはまらなければ、基本的に誰でも後見人になる資格があります。
しかし、申し立ての際に親族などの「信頼できる人」を後見人の候補者として推薦しても、最終的に「誰を成年後見人として選任するか」を決めるのは家庭裁判所です。必ずしも希望通りの人物が後見人に選任されるとは限りません。
家庭裁判所によって選任される後見人の8割近くは、司法書士、弁護士、行政書士といった専門家であり、親族などが選任されるケースはほとんどありません。
成年後見人等と本人との関係別件数・割合
成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人との関係をみると、配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが、全体の約21.8%となっています。 親族以外が成年後見人等に選任されたものは、全体の約78.2%(前年は約76.8%)であり、親族が成年後見人等に選任されたものを4倍近く上回っています。
成年後見関係事件の概況
なお、任意後見監督人の場合も同様に、親族などではなく、第三者(弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士などの専門職や法律、福祉に関わる法人など)が選ばれることが多くなっています。
第三者が後見人に選任されることが増えた背景として、成年後見人となった親族が、被後見人の財産を使い込むようなトラブルが多発したことが挙げられます。 そのため「不正防止」という観点で、親族が任命されることは少ないです。特に、被後見人の財産が多額の場合や、後見人の就任に反対する親族がいる場合などは、親族が後見人になることは難しいのが実情です。
成年後見制度の利用を検討している方は、この点をよく理解しておく必要があります。
成年後見人を辞任するには、家庭裁判所に正当な事由があると認められなければなりません。
自由に成年後見人を辞めることができてしまうと、成年被後見人の利益を侵害してしまう可能性があるためです。
成年後見人の辞任許可を受けるためには、後見開始の審判を受けた家庭裁判所に申し立てます。
申し立てには手数料800円や1,400円の収入印紙、および郵便切手代などが必要です。
手続きに関する詳細は裁判所ごとに異なるため、直接裁判所に問い合わせてください。
一方、成年後見人を解任したい場合には、成年後見人に以下の3つのいずれかに該当する事情が認められる必要があります。
これらの事由に該当する場合は解任の申し立てを行うことが可能です。
申し立てが認められるためには、成年後見人が解任事由に該当することを示す証拠が必要です。まずは証拠を集め、その証拠をもとに解任事由をまとめてください。
なお、申し立てを行う裁判所は成年被後見人の住所地の家庭裁判所であるため、間違えないように事前に確認しておくことをおすすめします。
ここまで成年後見制度の概要や申し立ての流れについて説明してきました。
成年後見制度の利用者数は年々増加傾向にあるものの、認知症患者数の割合から考えると、その数は非常に少ないと言えます。
成年後見制度の申立件数推移
65歳以上の認知症患者の推定者
では、なぜそのような乖離が生まれてしまうのでしょうか。
そこには、以下のような点が関係していると考えられます。 良い点・悪い点、それぞれの側面から見ていきましょう。
認知症の親を抱える子供にとって、「親と同居している親族が、財産を使い込んでいる」といった悩みが起きることがあります。これは決して珍しいケースではありません。
意思能力の低下により、自身で財産を管理することができない場合には、同居の親族や身近にいる人が、本人に代わって財産を管理していることが多いです。それらの人によって、勝手に預貯金が引き出されてしまうことが実際にあるのです。
しかし、成年後見制度であれば、こうした「親族による財産の使い込み」を防ぐことができます。成年後見人は、裁判所監督の下で財産管理を行ない、管理状況を定期的に報告することが求められるためです。預貯金を後見人が管理した場合なども、銀行に対して成年後見人になった旨の届出を行うことになり、後見人以外の人は預貯金を引き出すことができなくなります。
家族内での財産管理を望んでいる人にとっては、公的機関が財産管理に関与することはデメリットとも取れます。しかし、横領のような事態を防ぎ、厳格に財産を管理をしたい方にとっては、メリットと言えるでしょう。
認知症などで意思能力が衰えてしまうと、自分でも内容がよくわからないまま不当な契約を締結してしまったり、通販番組などで高額な健康食品などを大量に買い込んでしまったりすることがあります。同じような悩みを抱える家族も少なくないでしょう。
成年後見制度は、こういったトラブルにも対処することができます。 後見人には「取消権」と呼ばれる、本人が行った法律行為を取り消すことができる権限が与えられているためです。本人に代わって契約を取り消したり、代金の返還を請求したりすることができます。
高齢社会になり、高齢者を標的にした悪質商法による被害が問題視されている今、両親がこうした被害に遭う可能性もあります。心配な場合には、成年後見制度を利用しておくと安心かもしれません。
※任意後見制度には、「取消権」がないため、注意が必要です。
成年後見人の仕事の大きな特徴として、「身上監護」があります。「身上監護」とは、意思能力を喪失した本人に代わって、住居確保や生活環境の整備、要介護・要支援の認定申請、介護・福祉施設への入退去に係る手続き、医療・入院に係る手続き、費用の支払いなどを行うことです。
また、契約・手続き後も、本人を定期的に訪問し、「適切な介護や治療を受けているか」といった生活状況を確認することが求められます。身上監護はあくまでも、「本人の健康に配慮し、安心した生活が送れるように生活環境の手配・整備を行うこと」が仕事であるため、後見人が本人に対し、直接介護や看護などをすることなどは含まれていません。
離れて暮らしていてなかなか様子を見に行けない方や、本人の近くに身寄りがおらず不安な方にとっては、財産管理だけでなく生活面のサポートまで受けられる成年後見制度は有効な手段となります。
※一方で、後見人が入居施設などを選ぶことになるので、家族の希望する施設へ入居することができないといったトラブルも発生しています。
前述したとおり、成年後見人は、第三者(弁護士や司法書士など)が任命されるケースがほとんどです。
その場合、たとえ親族であっても財産に手を付けられなくなってしまいます。
成年後見人が任命される前は、本人に代わって親族がお金を下ろしていたような場合でも、通帳とカードは成年後見人に渡さなければならず、親族はお金を下ろすことができなくなってしまうのです。
※被後見人の親族が後見人として任命された割合は21.8%(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況-平成31年1月〜令和元年12月-」)
任意後見人には必ず、後見人が正しく後見行為を行っているかを監督する役割を持つ、任意後見監督人がつくことになります。(法定後見制度でも、家庭裁判所が必要だと判断した場合にはつきます)
後見監督人は家庭裁判所によって選任され、後見人に対して、後見事務に関する書類(領収書など)や財産目録、通帳のコピーなどの提出を求めます。本人の生活や財産状況は、全て家庭裁判所に知られることになるのです。
そのため、たとえ親族が後見人になったとしても、実質的に家庭裁判所の管理下に置かれることになります。
成年後見制度の利用を開始すると、本人の財産から、後見人に対して報酬を支払う必要があります。報酬の金額は本人の財産額によって異なり、家庭裁判所によって決められます。(※)
管理財産額 | 月額 |
---|---|
1,000万円以下 | 2万円 |
1,000万円 ~ 5,000万円 | 3~4万円 |
5,000万円超 | 5~6万円 |
後見監督人、任意後見監督人の場合も同様です。費用は以下のようになります。
管理財産額 | 月額 |
---|---|
5,000万円以下 | 1~2万円 |
5,000万円超 | 2万5千円~3万円 |
これらの金額以外にも、申し立ての際にかかる費用(申立手数料、後見登記手数料、連絡用郵便切手代、医師による鑑定料など)がかかってくるため、経済的な負担が非常に大きくなります。
※ 法定後見人の場合。任意後見人の場合、報酬は被後見人との事前の取り決めで指定します。
成年後見制度は、一度利用を開始すると本人の意思能力が回復したと認められるような場合でない限り、途中でやめることはできません。現在の医療では認知症の進行は不可逆的であり、意思能力の回復は見込めません。
そのため、本人が亡くなるまで上記の報酬・費用を継続的に支払い続けることになります。
成年後見制度は、あくまでも本人の現有財産の維持・保護を図ることが最大の目的となるため、積極的に財産を運用するような行為は想定されていません。
財産を運用するような行為には、財産を子や孫の教育資金として使いたいといった本人以外のために使う場合や、財産の株式への投資なども含まれます。
基本的に「本人の財産を減らす」ことに繋がる行為は認められません。
成年後見人には、4つのできないことがあります。
あらかじめできないことを把握しておくことで、利用後にトラブルが発生しないように準備しておく必要があります。
成年後見人は「事実行為」ができません。
例えば、本人のための買い物や病院までの送迎、本人の介護などが挙げられます。
こうした労務を直接提供する行為は、事実行為として成年後見人にはできません。
そのため、事実行為を支援する必要がある場合は、ヘルパーの契約をしたり介護タクシーを呼んだりするなど、成年後見人以外の人にしてもらう必要があるため、注意してください。
成年後見人は成年被後見人の「身分行為」もできません。
例えば、婚姻届や離婚届の提出、養子縁組をする、遺言書を書くことなどが挙げられます。
こうした成年被後見人の身分に関する法的効果に影響を与える行為はできないのです。
もっとも、成年後見人でなくても、性質上、身分行為を他人が代理することはできないため、成年後見人に限った話ではありません。
事実行為に加え、身分行為ができない点にも注意しておきましょう。
成年後見人は、医療行為への同意もできません。
医療行為を受けるために治療や入院の手続きをサポートすることは可能ですが、医療行為そのものへの同意はできないのです。
医療行為への同意も、身分行為と同様に代理権が適用される範囲から外れているため、成年後見人でなくてもできません。
ただし、家族が成年後見人になっている場合や医療行為が軽微な場合(健康診断・検査など)は、同意が有効になる場合があるため、状況に応じて確認してみることをおすすめします。
成年後見人は、身元保証人や身元引受人などになることもできません。
成年被後見人の財産管理や身上保護を行う場合は、成年被後見人と同じ立場になるため、本人が本人の身元保証人や身元引受人になれないからです。
ただし、家族が成年後見人になっている場合、医療機関や社会福祉施設を利用する際などの一部のケースでは、施設から身元保証人への就任を依頼されるケースもあります。
この場合は成年後見人が身元保証人になることが例外的に認められている可能性が高いため、就任を依頼された場合は確認してみてください。
「デメリットがあっても、実際に利用している人がいるんでしょ?」 そう思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そこで、この項では、実際に成年後見制度を利用した方のお声を一部ご紹介します。
「母の預金を解約したいだけだったのに、いったん利用を開始すると途中でやめることができず、ずっと月 4 万円程の費用を支払わなくてはならなくなった。こんな制度だと知っていたら絶対に利用しなかったのに…。」
「任意後見制度を利用すれば家族で管理できると思っていたが、結局家庭裁判所から任命された後見監督人によってお金の利用を大きく制限されることになった。家族で外食に行った時も、被後見人である父が『おごるよ』と言ったので、父の預金から支払ったところ、後日監督人から『裁判所として認められない』と言われ、領収書の金額を家族で割り、父の分以外を返却するハメになった。毎年恒例だった家族旅行も、『無駄遣いだ』と言われるため、旅行自体に行くことができずにいる。利用して良かったことは何一つない。」
「本人のためと思ってお金を使おうとしても、いちいちお伺いを立て、認めてもらう必要がある。不動産の売却を申し出た時は、家庭裁判所から『なぜ売却が必要なのかの合理的な理由』を述べるように言われ、結局許可が下りなかった。毎日がストレスの連続で頭が変になりそうです。」
など
上記の事例からも分かる通り、成年後見制度は負担や制約が多く、本人や親族の意向に沿った柔軟な財産管理を行うことが難しい制度であることが実情です。ご家族状況によっては、後見制度を利用することが適切であるケースもありますが、本当に利用すべきか否かについては慎重に判断する必要があります。
意思能力がまだ十分にある場合には、「家族信託」など、他の制度から検討を始めてみても良いかもしれません。
成年後見制度以外に、意思能力が低下した人の財産を代わりに管理する方法として、家族信託が挙げられます。
家族信託とは、家族が代わりに財産を管理する方法であり、成年後見制度よりも財産管理の自由度が高いことが特徴です。
意思能力が低下する前に、依頼する本人と家族との間で、どの財産を信託するのか、どんな目的で利用するのかなどを決め、その内容に沿った信託契約を結ぶことで利用することができます。
以下の記事で、家族信託に関する詳しい内容を解説していますので、興味のある方は併せてご覧ください。
では、成年後見制度と家族信託はどちらを選べば良いのでしょうか。
ここでは、成年後見制度がおすすめのケースと、家族信託におすすめのケースを3つずつ紹介します。
まずは、成年後見制度の検討をおすすめするケースを3つ解説します。
判断能力が低下している場合、財産トラブルに巻き込まれる事態が想定されます。
判断能力が低下していると、必要な個数よりも何倍も多く注文してしまったり、悪徳商法に引っかかってしまったりすることが考えられます。
このような事態に陥っても、成年後見制度では、本人に代わって契約の取り消しが可能です。
判断能力が低下している本人と同居中の他の親族による使い込みも、成年後見制度によって阻止できます。
このような財産トラブルが心配な場合は、成年後見制度の利用がおすすめです。
家族信託は、本人の判断能力がある状態で、将来、判断能力が失われた場合に備えておくための制度です。
そのため、本人の判断能力がすでに失われている場合は、家族信託を結ぶことができません。
したがって、本人の判断能力がすでに失われている場合に、本人以外が財産管理をするには成年後見制度を利用することになります。
専門家に財産管理や身上保護を任せたい場合にも、成年後見制度の利用がおすすめです。
例えば、家族で財産管理をするのが不安な場合や、忙しくて財産管理や身上保護にまで手が回らない場合が想定されます。
家族信託では家族が財産管理をすることになるため、これらの不安や負担は軽減されません。
しかし、成年後見制度で専門家に依頼すれば、責任を持って財産管理をしてくれますし、家族が日常生活の時間が取られてしまうことは少なくなります。
続いて、家族信託の検討をおすすめするケースを3つ紹介します。
判断能力が低下した場合、家族だけで財産管理をしたいと考える方も多くいるでしょう。
成年後見制度では、弁護士や司法書士などの専門家が財産管理に関与するケースがほとんどです。しかし、家族信託では、家族のみでの財産管理ができます。
このように、家族だけで財産管理をしたい場合には、家族信託の検討がおすすめです。
成年後見制度では財産管理の方法が限定されています。
資産運用や相続税対策などの直接的に本人のためにならない用途には、財産を使用できません。
一方で家族信託は、信託を依頼する本人と家族との間で合意していれば、その範囲内において財産を自由に使えます。
このように、柔軟に財産を管理、運用、処分したい場合は家族信託がおすすめです。
成年後見制度では相続先を指定できません。
また、遺言書を併せて使用した場合でも、自分の次の代までしか相続先を指定できません。
しかし、家族信託は孫の代まで相続人を指定できます。
例えば、自分が亡くなったら長男に全財産を承継させ、長男が亡くなったら長男の子どもに残っている財産を全て相続する、などの指定が可能です。
このように、孫の代まで相続人を指定しておきたい場合も、家族信託がおすすめです。
実は、類似した制度である成年後見制度と家族信託は併用が可能です。
どのような場合に併用することが望ましいか、また併用する際に気を付けることについても解説します。
成年後見制度と家族信託の併用をおすすめするケースは、財産所有者に身上監護が必要なケースです。
家族信託でも財産管理はできますが、本人の判断能力低下により、必要のない契約を締結してしまった場合、家族信託では契約を取り消せません。
一方、成年後見制度を結んでいる場合、身上監護が認められているため、契約を取り消すことができるのです。
そのため身上監護が必要な場合は、成年後見制度と家族信託を併用することをおすすめします。
家族信託で信託できる財産には制限があるため、中には信託財産化できない財産が出てきてしまうこともあります。
例えば、農地や賃貸人が譲渡を承諾しない借地権、株式などが当てはまります。
信託財産化できていない財産が多くある場合、本人の判断能力が低下したとき、家族信託の受託者は信託財産化できていない財産を管理したり処分したりすることができません。
そのため、信託財産化できない財産がある場合も、成年後見制度と家族信託との併用をおすすめします。
家族信託と成年後見制度の併用では、以下の3つの点に気を付けてください。
家族信託と成年後見制度は異なる制度であるため、併用する場合は両方の費用がかかります。
申し立てにかかる費用のみならず、司法書士への報酬なども両方にかかるため、大きな出費になる可能性があるのです。
2つの制度への申し立てを同じ司法書士に頼むと割引してもらえることもありますが、それでも1つの制度を利用する際よりも多くの費用がかかります。
あらかじめどの程度費用がかかるのかを確認した上で併用することをおすすめします。
家族信託と成年後見制度を同時に開始することはできません。
本記事の序盤でも解説したように、家族信託は本人の意思能力が喪失する前に、成年後見制度は本人が判断能力を失った後に申し立ての手続きをします。
それぞれの制度を利用する際に申し立てを行うため、必然的に申し立てのタイミングがズレてしまうのです。
そのため、似たような手続きを2度も行うことになるため、やや手間がかかり面倒だと感じる方もいるでしょう。
家族信託と成年後見制度の併用では、利益相反問題が発生する可能性もあります。
これは家族信託の受託者と、任意後見制度の任意後見候補者を同一人物にすると生じる問題です。
家族信託の受託者は、信託契約を結び本人の財産管理を行います。
一方、任意後見人は本人の財産管理を監督する役割を負います。
家族信託の受託者と任意後見候補者が同一人物の場合、自分で管理している財産を自分が監督するという構図になるため、利益相反問題が出てしまう点に注意してください。
成年後見制度と家族信託の併用は、足りない点を補える点で非常に便利です。
ここでは、成年後見制度と家族信託を併用する際に、何に注意すれば良いのかを解説します。
家族信託と成年後見制度において、受託者と任意後見人が同一人物になるのは望ましくありません。
家族信託では受託者が本人の代わりに財産を管理・運用し、受益者である本人がそれを監視する役割を果たします。
将来、本人の判断能力が低下すると、成年後見人が本人に代わって財産を管理する立場になります。
こうなると、財産を管理する人もそれを監視する人も同一人物になってしまい、利益相反の状態になることで、監視の役割を果たせなくなってしまう可能性があるのです。
しかし、財産管理をしたい本人は、一人に全て依頼したいと考えるのも無理はありません。
では、どうするのが適当なのでしょうか。
管理を任せられる人が複数いる場合と一人しかいない場合に分けて解説します。
実質的に財産を管理するのは、家族信託における受託者です。
そのため、管理を任せられる人が複数いる場合は、信頼のおける人を受託者にするのがおすすめです。
他の家族には、任意後見人になってもらい、受託者の財産管理に問題がないかを監視してもらう役割をお願いしましょう。
一方、管理を任せられる人が一人しかいない場合は、一人にお願いするしかありません。
ただし、この際には、一人にお願いしても全く問題がないと言えるほどに信頼関係が築けていることが前提です。
そうでない場合は、他の制度の利用も検討してみてください。
また、一人に任せる場合は、利益相反になってしまうため、利益相反が想定される条項を代理権目録に盛り込んだり、信託契約書に利益相反許容条項を盛り込んだりする対策が必要です。
家族信託も成年後見制度も、利用を開始する際に専門家のサポートを受ければ、その分の費用がどちらにも発生します。
加えて、成年後見人に専門家を選定する場合には月額報酬を支払う必要もあります。
なお、専門家への月額報酬は2〜6万円ほどです。
このように、2つの制度を利用する分、多くの費用がかかる点にも注意しておきましょう。
家族信託は、判断能力を失う将来を見込んで、判断能力のあるうちに契約をし、効力が発生します。
一方、任意後見制度は、契約自体は判断能力があるうちにできますが、利用は判断能力を失った時に開始の審判を請求し、認められることで開始されます。
そのため、同時に家族信託と任意後見制度を開始することができない点にも注意が必要です。
実際に利用するまでは1万2千円〜2万円程かかると言われています。但し、医師の診断書が必要な場合には上記金額に加え、5万円〜10万円程度かかり、診断書の内容は医師によっては20万円程かかってしまうこともあります。
また、利用が始まった後、明確に報酬額が決まっているわけではなく、2万円〜6万円程度となっています。成年後見人等の報酬額は、家庭裁判所の裁判官が決めますが、平成25年1月1日付で、東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部が「成年後見人等の報酬額のめやす」をだしています。
かかりつけの医師にご相談ください。上記にも記載のとおり、診断書の内容は医師によっては20万円程掛かってしまう可能性もあります。事前にいくらかかるのか聞いておきましょう。
実子が後見人になることを希望することは可能です。
しかし、誰が後見人になるのかを判断するのは家庭裁判所であるため、必ず後見人になれる保証はありません。
もし、実子が後見人を希望する場合は、申し立て時に「後見人等候補者」として実子を含め、家庭裁判所で面接を受けます。
面接などの過程を通して、裁判所から実子が後見人に適切だと判断されれば、後見人になることができます。
通帳の紛失などにより本人の財産がわからない場合があるでしょう。
その際は、申し立て時に記載する本人の財産目録にある「不明」にチェックを付けてください。
これにより、本人の財産がわからないことを家庭裁判所に伝えることができます。
成年後見制度を利用することで、財産の使い込みの防止や不当な契約の取り消しが可能です。
一方、家族が財産を管理できるとは限らないというデメリットもあります。
家族信託を併用すれば、成年後見制度のデメリットを家族信託で補いつつ、成年後見制度のメリットも享受することが可能です。
しかし、家族信託と成年後見制度を併用する場合、注意点があります。
ファミトラでは家族信託に関するサポートをメインで行っており、家族信託や成年後見制度に関する相談を受け付けています。
成年後見制度や家族信託についての理解を深め、適切な利用方法を知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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