成年後見制度は自分でできるの?最初に結論を確認!
成年後見制度の利用を考えている人の中には、「自分で手続きを行うことはできるのだろうか……」「自分で最後まで書類を集め、提出することができるのだろうか……」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか?
そんな方に朗報です。結論から言えば、成年後見人の申立て手続きを自分で行うことは可能です。確かに書類を集めたり、管轄の家庭裁判所を調べたり、実際に資料を作ったりなど面倒な事があります。
ただし、書類の準備や申立書類の作成など、いくつかの手順を踏む必要があるため、手続き全体の流れを正しく理解しておかなければ自分で行うことは難しいでしょう。
書類の準備や申立書類の作成など、いくつかの手順をきちんと踏む必要があるため、手続き全体の流れを正しく理解しておかなければ、自分で最後まで行うことは難しいでしょう。
よく質問として寄せられる、申立てにかかる費用や期間についても解説しておりますので、成年後見制度の利用を検討してそこで今回の記事では、成年後見制度の申立て手続きを自分で行う際に必要な書類や手順、事前に調査しておく項目、申立にかかる費用、申立後にかかる費用についてまとめてみました。
よく質問として寄せられる、申立てにかかる費用や期間については、さらに具体的に解説しておりますので、成年後見制度の利用を検討している方は是非参考にしてみてください!

姉川 智子
(あねがわ さとこ)
司法書士
2009年、司法書士試験合格。都内の弁護士事務所内で弁護士と共同して不動産登記・商業登記・成年後見業務等の幅広い分野に取り組む。2022年4月より独立開業。
知識と技術の提供だけでなく、依頼者に安心を与えられる司法サービスを提供できることを目標に、日々業務に邁進中。一男一女の母。
成年後見開始の申立て手続きは自分でできる?士業や専門家の知識は必要?
冒頭でもお伝えしたとおり、成年後見開始の申立て手続きは、専門家に依頼せずとも自分で行うことができます。
とはいえ、なにかと手続きが複雑で手間がかかることから、一般的には弁護士や司法書士といった専門家に依頼するケースがほとんどです。
自分で申立てをする場合、専門家に依頼するよりも費用が安く済む一方で、書類の準備や手続きを全て自分で行わなければならないという難点もあります。
また申立てができる人は、本人や配偶者、4 親等以内の親族等に限られているので注意しましょう(本人が自分で申立てをするには、申立ての意味内容が理解できるだけの意思能力が必要です)。
実際の費用は?結局どのぐらいお金がかかるの?
成年後見制度を利用する場合、かかる費用は「実際に利用するまで」と「利用が始まった後」の2種類があります。
成年後見制度を開始するまでに、実際にかかる費用は?
結論、実際に利用するまでは12,000円〜20,000円かかると言われています。但し、医師の診断書が必要な場合には上記金額に加え、5万円〜10万円程度かかり、診断書の内容は医師によっては20万円かかってしまう可能性もあるそうです。
成年後見制度が始まってから、月々かかる費用は?
また、利用が始まった後明確に報酬額が決まっているわけではなく、2万円〜6万円程度とされています。後見人等の報酬額は、家庭裁判所の裁判官が決めますが、平成25年1月1日付で、東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部が「成年後見人等の報酬額のめやす」をだしています。
成年後見制度が始まってから、終わるまでの費用は?
もし、成年後見制度を利用する期間が10年ある場合、240万円〜720万円程を支払うことになります。これは大きな費用になりますので、成年後見制度がスタートしてから、実際に将来、払い続ける金額をしっかりと事前に調査しておく必要がありそうです。
専門家に頼んだ場合の費用は?どのぐらいかかるの?
成年後見制度について専門家を使って申立を行う場合、上記に記載の費用の他に専門家に対して支払う「コンサルティング費用」がかかるのが通常です。
ですが、この費用は専門家や、期間、作業量によって変わってくるので専門家に聞いてみる事をおススメします。
後見開始のための流れを徹底解説!
管轄している家庭裁判所がどこか、調査をする
後見開始の申立てをするにあたり、まずは本人の住所を管轄する家庭裁判所で申立書類を一式取得しなければなりません。
そのために、まずは管轄している家庭裁判所がどこなのか調査をしましょう。家庭裁判所に行ったことがない方も多くいらっしゃると思いますので、事前にどこの家庭裁判所が管轄なのかを知ることが大事です。
家庭裁判所によって営業している時間が違うので、実際に行くまでの時間や、どの時間に営業しているか事前にリサーチしましょう。
後見開始の申立てを自分で行うために必要な書類を集める
後見の開始には、いくつか用意しなければならない書類があります。どの書類もこの記事を読んでいる方は初めて見るものだと思うので、しっかりとチェックしてみてください。
ここでは必要書類について解説します。
申立書類一式を用意する
後見開始の申立てをするにあたり、まずは本人の住所を管轄する家庭裁判所で申立書類を一式取得しなければなりません。
申立書類は以下のとおりです。
- 申立書
- 申立事情説明書
- 後見人等候補者事情説明書
- 後見人等候補者事情説明書
- 財産目録
- 収支状況報告書
- 親族関係図
申立書類は家庭裁判所から郵送してもらえるほか、ホームページからダウンロードすることもできます。
それぞれの記載例も家庭裁判所のHPで確認できるため、書き方がわからない方は事前にチェックしておくことをオススメします。
なお、申立書類は、家庭裁判所ごとに名称や様式が異なるため、必ず申立て先の家庭裁判所から取得するようにしましょう。
また上記の書類のほか、住民票や戸籍謄本といった本人に関する書類の提出も必要です。
その他資料の用意をする
- 戸籍謄本(全部事項証明書)
- 住民票または戸籍附票
- 成年後見人等の登記がされていないことの証明書
- 本人の財産を裏付ける書類(残高証明書、不動産登記事項証明書 など)
- 本人の収入・支出に関する書類(年金額決定通知書、給与明細書、施設利用料等の通知書 など)
- 本人の健康状態に関する資料(会議保険認定書、療育手帳、身体障害者手帳 など)
状況によっては、上記以外の書類の追加提出を求められる場合もあります。
本人情報シートの作成を依頼する
家庭裁判所指定の申立書類を一式集めたら、普段本人の支援をしているケアマネージャーやケースワーカーなどの福祉関係者に「本人情報シート」の作成を依頼しましょう。
本人情報シートとは、普段から本人を支援している福祉関係者が本人の生活状況等に関する情報を記載し、医師が本人の判断能力を診断する際の参考資料として活用できるよう新しく導入された任意提出の書類です。
提出しなくても手続き上問題はありませんが、より正確に本人の判断能力のレベルを診断してもらうために重要な書類となります。
そのため、作成してもらうことが難しくない方は併せて準備することがおすすめです。
なお、本人情報シートも家庭裁判所のHPより取得できます。
ケースワーカーや福祉関係者がいない場合
上記にも記載していますが、本人情報シートも家庭裁判所のHPより取得が可能です。
管轄の家庭裁判所のHPから事前にダウンロードし、書式を確認し記載しましょう。
もしくは、お近くの地域包括センターにて福祉関係者を紹介してもらうのも良いかもしれません。
診断書の作成を依頼する
成年後見の申立てには、医師の診断書が必要です。
成年後見制度は、「意思能力の低下が見られるかどうか」が利用の判断基準となっているためです。
そこで家庭裁判所は、医師が作成した診断書をもとに精神上の障害の有無や、意思能力の低下がどの程度であるかを確認し、後見・補佐・補助の判断を下します。
診断書は特別な専門医などに依頼する必要はないため、かかりつけ医や近隣の内科、精神科などで作成してもらいましょう。
作成費用は医療期間によって異なるものの、5,000円〜1万円程度が目安となっています。
なお、診断書には所定の形式が定められているため注意が必要です。
裁判所の後見ポータルサイト内「成年後見制度における鑑定書・診断書作成の手引」から、事前に「診断書書式」をダウンロードしておきましょう。
作成費用は医療機関によって異なるものの、5,000 円から 1 万円程度が目安となっています。
家庭裁判所へ申立てをするために必要な手続き
成年後見開始の申立てに必要な書類が整ったら、いよいよ家庭裁判所へ申し立てるための手続きへと移ります。
ここでは、家庭裁判所に申立てをする際の手順についてまとめてみました。

家庭裁判所へ電話をして面接日の調整をする
家庭裁判所では、後見開始の申立てをするに至った事情を確認するため、申立人や成年後見人候補者に対し面接を行っています。
そのため、必要な書類の準備が整ったら管轄する家庭裁判所に電話で連絡し、面接日の予約をしましょう。
面接の所要時間はおおむね 1 ~ 2 時間程度になるため、スケジュールに余裕のある日に設定するようにしましょう。
また面接日は 1 週間以上先で、裁判所の状況によっては 2 週間以上先になることもあるので、申立て書類の準備に目処が立った時点で先に予約を入れておくとスムーズです。
家庭裁判所へ書類を提出する
面接の日程が決まったら、面接日時と予約番号を「提出書類確認シート」に記載します。
その後、同シートと申立書類一式・収入印紙・郵便切手を申立てをする家庭裁判所宛に発送します。
なお書類は、面接予定日の 3 営業日前までに到着するよう心がけましょう。
家庭裁判所への申立て手続きから後見開始までの流れ
家庭裁判所への申立て手続きから後見開始までの流れは、主に次の通りです。
- 審理が行われる
- 審判が下される
- 後見人や後見監督人の選任・登記手続きが行われる
- 後見が開始される
それぞれについて見ていきましょう。
書類の内容や面接でのやりとりをもとに、家庭裁判所において審理が開始されます。
審理では本人の精神鑑定が実施されることもあるほか、調査官による調査・親族への意向確認などがなされます。
本人が裁判所に出向くことが難しい場合には、省略される場合もありますので、前もって確認しておくとよいでしょう。
審理が始まってから終局するまでの期間は裁判所の繁忙や審理内容によって異なるものの、おおよそ 2 カ月以内となるケースがほとんどです。
審理が終わると、これまでの申立書類や調査結果をもとに審判が下されます。
具体的には本人に成年後見人が必要であるかどうか、必要な場合は「後見」「保佐」「補助」のどこに該当するのかを判断されます(「保佐」や「補助」の場合は同意権や代理権の範囲も定められます)。
結果、後見が必要である場合には最も適任と思われる人が成年後見人に選任されます。
ただし審判に不服がある場合には、申立人や利害関係人は審判書が手元に届いてから 2 週間以内に限り、不服申立てが可能です。
また場合によっては、成年後見人を監督・指導する成年後見監督人が選任されることもあるので注意しましょう。
後見の開始が決まると、家庭裁判所から法務局に対し後見登記の依頼が行われ、そこには後見人の住所氏名や権限などが記載されます。
後見登記は裁判所が依頼してから 2 週間程度で完了し、後見人に対して登記番号が通知されるので、通知された番号をもとに法務局で「登記事項証明書」を取得しましょう。
ここで取得した登記事項証明書は、預金口座の解約をはじめ本人財産の調査など後見人としての仕事を行う際に必要です。
また登記事項証明書は、最寄りの法務局の本局へ申請して取得しなければならず、支局や出張所では取得できません。
請求できる人も本人や本人の配偶者、本人の 4 親等内の親族、本人の後見人などに限られています。
なお手続き後、親族が後見人に選任された場合には裁判所から職務説明の案内が届きます。
成年後見人に選任されたらそれで終わりというわけではなく、後見人は本人の財産目録および年間収支予定表を作成し、定められた期限内(1カ月以内が目安となることが多い)に提出しなければなりません。
また成年後見人の仕事はこれら書類の作成だけにとどまらず、金融機関での各種手続きや役場への届出業務など多岐にわたります。
成年後見人の申立て手続きに必要な費用の内訳
成年後見人の申立て手続きでは、書類の取得や申立ての際にさまざまな費用が発生します。
主に必要となる費用は以下のとおりです。
項目 | 費用 | 支払先・備考 |
申立書類一式 | 無料 | 家庭裁判所 |
申立手数料(収入印紙代) | 800円 | 裁判所または郵便局 |
戸籍謄本 | 450円 | 市区町村役場(本籍地) |
住民票 | 300円 | 市区町村役場(住民票) |
登記されていないことの証明書 | 300円 | 法務局 |
医師の診断書 | 5,000円〜1万円程度 | 主治医の病院 |
郵便切手代 | 3,000円〜5,000円程度 | 裁判そまたは郵便局等 |
後見登記手数料(収入印紙) | 2,600円 | 裁判所または郵便局等 |
医師の鑑定料(必要な場合のみ) | 5万〜10万円程度 | 裁判所 |
上記のうち必ず必要となる費用を合計すると、申立て費用の総額は12,000円〜20,000円程度であることがわかります。
成年後見人の手続きを自分で行う場合の注意点
家庭裁判所への申立て手続きから後見開始までの流れがわかったところで、成年後見人の手続きを自分で行う場合の注意点について見ていきましょう。
申立て費用は原則として申立人が負担する
成年後見人の申立て費用は、原則として申立人が負担することになります。
ただし、特別な事情がある場合には家庭裁判所に申立人以外の「関係人」に対して、申立て費用の負担を命ずること(費用負担命令)が可能です。
申立てを支援した専門家(弁護士や司法書士など)に支払われる費用は費用負担命令の対象とならず、申立人が負担することになりますので注意しましょう。
なお、後見人に支払う報酬は本人の財産から支払うことになっています。
申立てから後見開始まで数カ月かかる
個々の案件によって多少の違いは生じるものの、後見の申立てから後見開始の審判が下されるまでに、早くても 2 カ月以上かかります。
さらに、審判が確定し後見登記事項証明書を取得できるまでには、3 ~ 6 カ月ほどの期間が必要です。
財産管理に不安がある場合は、家族信託の利用も含め本人の意思能力が低下する前に他の対策を講じることはできないか考えておくとよいでしょう。
成年後見制度利用のメリット、デメリットは?
こちらの記事に記載の通り、成年後見制度の利用にはメリットとデメリットがあります。

<メリット>
- 判断能力を失った後でも本人の財産を使用することができる
- 不必要な契約を取り消すことができる
- 親族による財産の使い込みなどを防ぐことができる
<デメリット>
- 手続きの手間やコストがかかる
- 一度利用を開始すると途中でやめることができない
- 本人以外のために財産を使うことはできない
- 柔軟な財産管理を行うことができない
- 家族が後見人になれるとは限らない
成年後見制度で良いのかどうか、メリットとデメリットを比較した上で、しっかりと検討しましょう。
成年後見人の手続きは自分でする前にまず相談を!

成年後見制度の申立て手続きは自分自身で行えるものの、それ相応の手間や労力が生じることがあります。
後見開始の申立てから実際に後見が開始するまでに数カ月を要することから、それを見越して準備をするなど、手続きがスムーズに進むように努めることも大切です。
「自分で手続きを行うのは不安だ」という場合には、代行してもらうことも視野に入れて、一度専門家に相談してみるとよいでしょう。
今回は成年後見制度をご紹介しましたが、本人の意思能力が低下する前であれば「家族信託」を利用するという選択肢もあります。
家族信託であれば、家庭裁判所を介在させることなく、信頼できるご家族間で、成年後見制度よりも柔軟な財産管理や運用を行うことが可能です。
家族信託の組成が間に合うようであれば、この機会に家族信託の利用について検討してみてはいかがでしょうか。
成年後見人制度に関するよくあるご質問
家族信託に精通した専門家が、お客様の相談を受け付けております。
ファミトラでは、家族信託に限らず相続対策や成年後見制度にまつわるご相談など幅広く対応することが可能です。

さまざなお客様のケースに対応してきた経験豊富な家族信託コーディネーターが、お客様一人ひとりのご状況に合わせて親身にサポートいたしますので、「まずはお話だけ…」という方もお気軽にご相談ください。
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