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成年後見制度では、成年後見人を付けるための手続きが必要です。
本記事では、成年後見人を選任する手続きの方法について様々な視点から詳しく解説します。
記事を読むと、成年後見人の職務内容となれる人についてわかるようになります。ぜひ最後までご覧ください。
姉川 智子
(あねがわ さとこ)
司法書士
2009年、司法書士試験合格。都内の弁護士事務所内で弁護士と共同して不動産登記・商業登記・成年後見業務等の幅広い分野に取り組む。2022年4月より独立開業。あねがわ司法書士事務所
知識と技術の提供だけでなく、依頼者に安心を与えられる司法サービスを提供できることを目標に、日々業務に邁進中。一男一女の母。
成年後見人とは、認知症や精神的な障がいにより、判断能力が著しく低下した人を支援する役割を担う人のことをいいます。
判断能力が低下してしまうと、通帳や印鑑などを失くしてしまったり、騙されて高額な商品を買わされたりすることが起こりやすくなります。
このような事態にならないように、本人の代わりに財産の管理・保護、生活の支援をするのが成年後見人の役割です。
成年後見人には法定後見人と任意後見人の2種類があります。
法定後見人は裁判所が選任し、選任された法定後見人が被後見人の財産管理や生活支援を行います。
任意後見人は任意後見制度において、自分自身で選任することが可能です。
法定後見制度とは、本人の判断の判断能力が低下したときに、家庭裁判所に申し立てを行うことで法定後見人が選任され、本人を保護・支援する制度です。
法定後見制度は更に「後見」「保佐」「補助」の3つに分類され、それぞれに異なる役割を担っています。
「後見」とは、被後見人が判断能力を欠く状況の場合に選任されます。
「保佐」とは、被保佐人に代わって一定の行為を行います。判断能力が著しく不十分な場合に保佐人が選任されます。
「補助」とは被補助人と協力して財産管理や生活支援を行います。被補助人は判断能力が不十分な場合に補助人が選任されます。
本人の判断能力の程度によって、3つの中から法定後見制度を適用します。
任意後見制度とは、本人の判断能力が失われる前に自分で任意後見人を選択して任意後見契約を締結します。
その後、判断能力が失われた場合に支援が受けられます。
任意後見人は、法定後見人と異なり裁判所の選任が必要ありません。手続きが簡便なため、自己の意思を尊重した財産管理や生活支援が受けられます。
一方、法定後見人と異なり裁判所が任意後見人を選任するわけではないため、任意後見制度を利用する際には、信頼できる任意後見人を自ら選定する必要があります。
成年後見人が必要な理由は、本人の判断能力に低下がみられ、財産を適切に保護する必要がある場合です。
契約のような法律行為が必要な場合には、判断能力が失われた本人に代わって成年後見人が法律行為を行う必要があります。
成年後見の開始原因は、圧倒的に認知症が多くなっています。裁判所が公開しているデータによると、成年後見の開始原因の約63.2%は認知症によるものです。
2位が知的障害、3位が統合失調症と続きますが、2位以降はいずれも10%を切っているため、認知症による成年後見の開始がどれほど多いのかがわかるでしょう。
認知症と後見人の関係について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
参考:最高裁判所事務総局家庭局|成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―
成年後見人が必要な6つのケースについて解説します。
裁判所が公開しているデータによると、成年後見制度を申し立てる動機は預貯金等の管理・解約が1番多いです。次いで身上保護、介護保険契約の順に多くなっています。
以下で、成年後見人が必要なケースについて、6つの具体例を用いて解説します。
参考:最高裁判所事務総局家庭局|成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月―
預金の管理や解約をしたい場合、判断能力が失われた本人では法律行為が無効となってしまうため成年後見人が必要です。
預金の解約は、本人でなければできないため、代理人として手続きを進める人が必要になります。
例えば、本人の生活費や医療費など、本人のために使用するお金が必要なときには、成年後見人が本人に代わって引き出すことができます。
このように、成年後見人を選任すれば、被後見人に代わって財産の管理が可能です。
不動産の処分には、契約書の作成や金銭のやり取りが発生します。
取引額も高額になるケースが多く判断能力に不安がある場合には、自分で進められない可能性が高い法律行為です。
金銭のやり取りだけでなく、手続きが煩雑化した場合は成年後見人が必要です。契約書に不利な内容が記載されていても、判断能力が失われた本人は気付くことができません。
また、本人の意思能力が不十分な場合、契約行為そのものが無効になる可能性があります。
相続が発生し相続人が複数いる場合、遺産を各相続人に分割する手続きとして遺産分割協議が発生します。
遺産分割協議は相続人全員で進めなくてはなりません。判断能力がない方が含まれている遺産分割協議は、本人が協議に参加することは難しいです。
判断能力に欠ける場合、遺産分割が不利な内容で進んでいても気付くのは困難です。
相続人全員のためにスムーズに遺産分割協議を進めるためにも、成年後見人が必要です。
判断能力が失われると正しい判断ができないため、いつ詐欺被害に遭遇するかわかりません。
不当な契約をしてしまい気付くまでに時間がかかってしまうと、取り返しがつかない事態を招きかねません。
成年後見人がいれば、契約を本人に代わって行うため、詐欺被害を未然に防止できます。
また、被後見人や成年後見人は、取消権の行使が可能です。
本人が不当な契約をした場合、本人の財産を保護するため取消権が認められています。
判断能力が著しく低下していると、本人が気づかないところで親族が財産を使い込む可能性があります。
財産の使い込みを防ぎたい場合、成年後見人を選任することで財産管理を一任できます。
また、成年後見人は、預貯金の管理だけではなく被後見人の財産全体について管理する役割を有しています。
本人が財産を使いすぎそうな状況でも、成年後見人により止めることができます。
本人の生活を維持するために施設へ入居させる「身上保護」において、成年後見人が代理で施設入所契約をすることが可能です。
成年後見人を選任し、成年後見人が被後見人に代わって契約することで入所可能です。
施設側は、利用料の支払いが滞らないのであれば不都合はないため、成年後見人がいる方が安心して契約ができます。
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成年後見人になるために特別な資格はいりません。弁護士、司法書士、社会福祉士など法律や福祉の専門家、親族の他に地域の市民、また複数人や法人でも成年後見人になることができます。
しかし、成年後見人は被後見人の財産を管理するので、信用できない人に任せられません。
したがって、以下の欠格事由に当たる人は成年後見人になれません。
成年後見人の職務は大きく分けて、以下の5つです。
成年後見人は、成年後見開始の審判の日から、原則として2カ月以内に裁判所への初回報告が必要です。
報告する際には、年間収支予定表と財産目録の2つの書面を作成し、普通預金の通帳のコピーや定期預金の取引残高証明書なども添付します。
年間収支予定表を作成する際には、被後見人の収入と支出を把握することが必要です。
たとえば、年金や不動産、株式の配当による収入、クレジットカードの利用明細による支出などから収入と支出を調べます。
また、財産目録を作成する際には、不動産や預金、株式・有価証券などについて調査します。
財産管理とは、本人の財産を適切に維持・管理することです。
そのため、成年後見人には代理権が与えられています。
成年後見人が本人に代わり様々な契約を締結したり、収入と支出を把握し預貯金を管理したりするのです。
財産管理の具体的な職務には次のものがあります。
身上保護とは、成年後見人が本人に代わって介護の契約や施設への入所契約、または病院との契約など本人の生活や療養監護に関することを行なうことです。
成年後見人が本人に代わってできるのは法律行為だけで、事実行為は含みません。
身上保護の具体的な職務には次のものがあります。
成年後見人は、取消権の行使ができます。取消権を行使できるのは、買い物などの日常生活を除く法律行為です。
取消権を行使する場面としては、例えば、判断力がない被後見人が不要な壺などを購入してしまった場合などが挙げられます。
その場合、被後見人が購入の際に結んだ売買契約を成年後見人が取り消すことができ、はじめからなかったことにできるのです。
なお、任意後見人には取消権が認められていないため、注意が必要です。
成年後見人は、財産管理と身上保護を適切におこなっている旨を説明するため、原則として1年に1回、家庭裁判所に報告書を提出する義務があります。
提出する書類は、「後見等事務報告書」「財産目録」「収支報告書」「預金通帳のコピー」などです。
また、成年後見人はその職務に対して、被後見人の財産から報酬を受けとることができます。
報酬を受け取る場合は、職務内容の報告と合わせて、家庭裁判所に報酬付与の申し立てをします。
報酬額は、裁判所が決定します。
一方、成年後見人にはできないこともあります。どのような行為ができないのかを見ていきましょう。
成年後見人ができないことについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
成年後見人ができることは、被後見人を代理する「法律行為」であり、事実行為はできません。
法律行為とは法律上の効果が生まれる行為であり、事実行為とは法律上の効果が生まれない行為のことです。
例えば、病院に送迎したり被後見人の買い物についていくことは事実行為であり、成年後見人の職務ではありません。このような事実行為は、介護サービスの事業者などに任せることになります。
身分行為も成年後見人にはできません。身分行為とは、婚姻・離婚をはじめ被後見人の身分に変更を生じさせる行為のことです。
身分行為は本人の意思が尊重されるため、成年後見人が被後見人に代わって婚姻届や離婚届に判を押すことはできません。
成年後見人には、日常生活を除く法律行為に対して取消権が認められています。そのため、日常生活に関する行為の同意や取り消しが認められていないのです。
理由は、本人の意思を尊重する他、日常生活に関わる行為であれば購入金額が高くなってしまうことが少なく、財産に与える影響が小さいことなどが挙げられます。
医療行為の同意も成年後見人にはできません。成年後見人には法律行為が認められているため、被後見人のために医療行為に関する契約を締結することは可能です。
しかし、手術をするか否かなど、どのような医療行為を選択するのかは被後見人のみが決められるため、成年後見人が代わりに決めることはできません。
成年後見人は、被後見人の身元保証人や身元引受人になることもできません。
場合によっては、医療機関などから被後見人の身元保証人や身元引受人になって欲しいと頼まれることがあります。
しかし、被後見人の法律行為に関して代理できる人が被後見人の身元保証人になる場合、自分のことを自分で保証する状況が生まれてしまいます。
この状況では、成年後見人と身元保証人の利益が相反してしまい、職責を全うすることができません。そのため、成年後見人は身元保証人や身元引受人になることはできないのです。
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成年後見人の選任方法は、法定後見人と任意後見人で異なります。
2つで大きく異なるポイントは、裁判所の選任の有無です。
法定後見人の選任は家庭裁判所が行います。
家庭裁判所に申し立てをする際に、法定後見人の候補者を提示できます。ただし、提示した候補者の中から、優先的に裁判所が選任するとは限らない点に注意が必要です。
申立人が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に後見等開始の申し立てをすると、法定後見人が選任されます。
親族が選任されることもありますが、次のような事情がある場合は親族以外の専門家が選任されることが多いです。
家庭裁判所は様々な事情を考慮して、本人にとって最も良いと思われる人を法定後見人に選任します。
任意後見人は、本人が自分の意思に基づいて任意後見人を選任できる制度です。
法定後見人とは異なり、家庭裁判所が選任するわけではないため、被後見人が希望する任意後見人を必ず選任できるという点に特徴があります。
信頼できる親族を選任したいという場合には、任意後見制度の利用を検討すべきでしょう。
もっとも、法定後見人と異なり、任意後見の効力発生要件として、家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必須です。
成年後見人を選任するためには、裁判所に申請をすることから始まります。
以下で成年後見人の選定に必要な流れについて解説します。
まずは管轄している家庭裁判所がどこなのか調査をしましょう。
事前にどこの家庭裁判所が管轄なのかを知ることが大事です。
家庭裁判所によって開いている時間が違うので、実際に行くまでの時間や、どの時間に開いているのか事前にリサーチしましょう。
成年後見の開始には、いくつか用意しなければならない書類があります。
ここでは必要書類について解説します。
成年後見開始の申し立てをするにあたり、まずは本人の住所を管轄する家庭裁判所で申立書類を一式取得しなければなりません。
申立書類は以下のとおりです。
申立書類は家庭裁判所から郵送してもらえる他、ホームページからダウンロードすることもできます。
それぞれの記載例も家庭裁判所のホームページで確認できるため、書き方がわからない方は事前にチェックしておくことをおすすめします。
なお、申立書類は家庭裁判所ごとに名称や様式が異なるため、必ず申し立て先の家庭裁判所から取得するようにしましょう。
また、上記の書類の他、住民票や戸籍謄本といった本人に関する書類の提出も必要です。
状況によっては、上記以外の書類の追加提出を求められる場合もあります。
家庭裁判所指定の申立書類を一式集めたら、普段本人の支援をしているケアマネージャーやケースワーカーなどの福祉関係者に「本人情報シート」の作成を依頼しましょう。
本人情報シートとは、普段から本人を支援している福祉関係者が本人の生活状況などに関する情報を記載し、医師が本人の判断能力を診断する際の参考資料として活用できるよう新しく導入された任意提出の書類です。
提出しなくても手続き上問題はありませんが、より正確に本人の判断能力のレベルを診断してもらうために重要な書類となります。
そのため、作成してもらうことが難しくない方は併せて準備することがおすすめです。
普段から関わりのあるケースワーカーや福祉関係者がいない場合は、管轄の家庭裁判所のホームページから事前にダウンロードし、書式を確認し記載しましょう。
もしくは、近くの地域包括センターにて福祉関係者を紹介してもらうのも良いかもしれません。
成年後見の申し立てには、医師の診断書が必要です。
成年後見制度は、「意思能力の低下が見られるかどうか」が利用の判断基準となっているためです。
家庭裁判所は、医師が作成した診断書をもとに精神上の障がいの有無や、意思能力の低下がどの程度であるかを確認し、判断を下します。
診断書は特別な専門医などに依頼する必要はないため、かかりつけ医や近隣の内科、精神科などで作成してもらいましょう。
作成費用は医療期間によって異なるものの、5,000円〜1万円程度が目安となっています。
なお、診断書には所定の形式が定められているため注意が必要です。
裁判所の後見ポータルサイト内「成年後見制度における鑑定書・診断書作成の手引」から、事前に「診断書書式」をダウンロードしておきましょう。
成年後見開始の申し立てに必要な書類が整ったら、家庭裁判所へ申し立てるための手続きへと移ります。
ここでは、家庭裁判所に申し立てをする際の手順についてまとめています。
家庭裁判所では、成年後見開始の申し立てをするに至った事情を確認するため、申立人や成年後見人候補者に対し面接を行っています。
そのため、必要な書類の準備が整ったら管轄する家庭裁判所に電話で連絡し、面接日の予約をしましょう。
面接の所要時間はおおむね1~2時間程度になるため、スケジュールに余裕のある日に設定するようにしましょう。
また、面接日は1週間以上先で、裁判所の状況によっては2週間以上先になることもあるので、申し立て書類の準備に目処が立った時点で先に予約を入れておくとスムーズです。
面接の日程が決まったら、面接日時と予約番号を「提出書類確認シート」に記載します。
その後、同シートと申立書類一式・収入印紙・郵便切手を申し立てをする家庭裁判所宛に発送します。
なお、書類は面接予定日の3営業日前までに到着するよう心がけましょう。
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家庭裁判所への申請が完了すれば、成年後見人が選任されます。
成年後見人の審理開始から実際に開始されるまでの流れについて解説します。
家庭裁判所への申し立て手続きから後見開始までの流れは、主に次のとおりです。
それぞれについて見ていきましょう。
書類の内容や面接でのやりとりをもとに、家庭裁判所において審理が開始されます。
審理では本人の精神鑑定が実施されることもある他、調査官による調査・親族への意向確認などがなされます。
本人が裁判所に出向くことが難しい場合には省略される場合もありますので、前もって確認しておくと良いでしょう。
審理が始まってから終局するまでの期間は裁判所の繁忙や審理内容によって異なるものの、おおよそ2カ月以内となるケースがほとんどです。
審理が終わると、これまでの申立書類や調査結果をもとに審判が下されます。
具体的には本人に成年後見人が必要であるかどうか、必要な場合は「後見」「保佐」「補助」のどこに該当するのかを判断されます(「保佐」や「補助」の場合は同意権や代理権の範囲も定められます)。
その結果、後見等が必要である場合には最も適任と思われる人が法定後見人に選任されます。
ただし、審判に不服がある場合には、申立人や利害関係人は審判書が手元に届いてから2週間以内に限り不服申立が可能です。
また、場合によっては、法定後見人を監督・指導する成年後見監督人が選任されることもあるので注意しましょう。
後見の開始が決まると、家庭裁判所から法務局に対し後見登記の依頼が行われ、法定後見人の住所氏名や権限などが記載されます。
後見登記は裁判所が依頼してから2週間程度で完了します。
法定後見人に対して登記番号が通知されるので、通知された番号をもとに法務局で「登記事項証明書」を取得しましょう。
ここで取得した登記事項証明書は、預金口座の解約をはじめ本人財産の調査など法定後見人としての仕事を行う際に必要です。
また、登記事項証明書は、最寄りの法務局の本局へ申請して取得しなければならず、支局や出張所では取得できません。
請求できる人も本人や本人の配偶者、本人の4親等内の親族、本人の法定後見人などに限られています。
なお手続き後、親族が法定後見人に選任された場合には裁判所から職務説明の案内が届きます。
法定後見人が選任されたらそれで終わりというわけではありません。
法定後見人は本人の財産目録および年間収支予定表を作成し、定められた期限内(1カ月以内が目安となることが多い)に提出しなければなりません。
また、法定後見人の仕事はこれら書類の作成だけにとどまらず、金融機関での各種手続きや役場への届出業務など多岐にわたります。
任意後見人の審判から、登記までの流れは法定後見人と同じです。
異なるのは「任意後見監督人選任の申し立て」が必要になるところです。
「任意後見監督人選任の申し立て」には、任意後見契約を事前に締結している必要があります。任意後見制度は裁判所からの選任ではなく、任意後見契約の発効に基づき開始されます。
成年後見人の申し立て手続きでは、書類の取得や申し立ての際に様々な費用が発生します。
主に必要となる費用は以下のとおりです。
項目 | 費用 | 支払先・備考 |
---|---|---|
申立書類一式 | 無料 | 家庭裁判所 |
申立手数料(収入印紙代) | 800円 | 裁判所または郵便局 |
戸籍謄本 | 450円 | 市区町村役場(本籍地) |
住民票 | 300円 | 市区町村役場(住民票) |
登記されていないことの証明書 | 300円 | 法務局 |
医師の診断書 | 5,000円〜1万円程度 | 主治医の病院 |
郵便切手代 | 3,000円〜5,000円程度 | 裁判所または郵便局など |
後見登記手数料(収入印紙) | 2,600円 | 裁判所または郵便局など |
医師の鑑定料(必要な場合のみ) | 5万〜10万円程度 | 裁判所 |
上記のうち必ず必要となる費用を合計すると、申立費用の総額は12,000円〜20,000円程度であることがわかります。
なお、任意後見人を立てる場合は、任意後見監督人選任の申し立て費用とは別に任意後見契約の登記費用が必要です。具体的な費用の内訳は以下のとおりです。
項目 | 費用 |
---|---|
公正証書の作成手数料 | 11,000円 |
公正証書代 | 約10,000円 |
任意後見契約の登記嘱託手数料 | 1,400円 |
登記手数料 | 2,600円 |
成年後見制度を利用する場合、かかる費用は「実際に利用するまで」と「利用が始まった後」の2種類があります。
成年後見制度を利用するまでは12,000円〜20,000円かかるといわれています。
ただし、医師の診断書が必要な場合には、上記金額に加え、5万円〜10万円程度かかり、診断書の内容は医師によっては20万円かかる可能性もあります。
なお、任意後見人を立てる場合は、任意後見監督人選任の申し立て費用とは別に任意後見契約の登記費用が必要です。2〜3万円ほどかかるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
成年後見制度の利用が始まった後は、成年後見人等への報酬が必要です。
明確に報酬額が決まっているわけではなく、2万円〜6万円程度とされています。
成年後見人等の報酬額は、家庭裁判所の裁判官が決めますが、平成25年1月1日付で、東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部が「成年後見人等の報酬額のめやす」をだしています。
もし、成年後見制度を利用する期間が10年ある場合、240万円〜720万円程を支払うことになります。
大きな費用になるので、成年後見制度がスタートしてから、実際に将来、払い続ける金額をしっかりと事前に調査しておく必要があるでしょう。
成年後見制度について専門家を使って申し立てを行う場合、上記に記載の費用の他に専門家に対して支払う「コンサルティング費用」がかかるのが通常です。
この費用は専門家や、期間、作業量によって変わってくるので、専門家に確認する事をおすすめします。
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成年後見人の手続きは煩雑な点もありますが、自分で行うこともできます。自分で行うメリットを2つ解説します。
成年後見の手続きは、自分で行うこともできます。手続きを専門家に依頼するのとは異なり、報酬の支払いが発生しないためコスト削減につながります。
例えば、専門家である司法書士に任意後見契約書の作成を依頼するだけでも、報酬の目安としては8万円程度必要です。また、別途公証人手数料などの実費も発生します。これら以外には家庭裁判所や公証役場に同行してもらう際に、同行に伴う費用がかかる場合もあります。
成年後見の手続きを自分で行っておくと、職務内容への理解も深まり今後の対応にも生きてくるでしょう。
成年後見の手続きを自分で行うメリットの2つ目は、自分の都合の良いときに手続きができることです。
弁護士や司法書士などの専門家に手続きを依頼する場合、手続きが終わるまでには家庭裁判所や公証役場へ同行し、話し合いを重ねることもあるでしょう。
通常、弁護士や司法書士などは多くのクライアントを抱えており、忙しい中で話し合いをして手続きを進めていきます。
弁護士や司法書士の都合によっては、自分のスケジュールを大幅に調整しなければならない恐れも生じます。
成年後見の手続きを自分で行う場合、スケジュールを専門家に合わせることなく都合の良いときにできる点はメリットといえるでしょう。
ここでは、成年後見人の手続きを自分で行う場合の注意点について見ていきます。
成年後見制度の手続きをいったん開始すると、途中でやめることができません。途中で辞任すると、成年被後見人の財産保護ができなくなるためです。
ただし、家庭裁判所が成年後見人の辞任について正当な事由があると認めたときや成年被後見人の判断能力が自身で十分に判断できるレベルに戻ったときは、成年後見制度をやめることができます。
上記以外では、成年被後見人が亡くなるまで成年後見が続きます。
単に性格的に合わないことを理由に成年後見人の交代を希望する場合や成年後見人の報酬が高額であるという理由では、途中でやめることができません。
このように一度成年後見制度の利用を開始すると、途中で簡単にはやめられない点には注意が必要です。成年後見制度の手続き前には、制度の利用が本当に必要なのか十分に検討しましょう。
成年後見人の申立費用は、原則として申立人が負担することになります。
ただし、特別な事情がある場合には家庭裁判所に申立人以外の「関係人」に対して、申立費用の負担を命ずること(費用負担命令)が可能です。
申し立てを支援した専門家(弁護士や司法書士など)に支払われる費用は費用負担命令の対象となりません。申立人が負担することになりますので注意しましょう。
なお、成年後見人に支払う報酬は本人の財産から支払うことになっています。
個々の案件によって多少の違いは生じるものの、後見の申し立てから後見開始の審判が下されるまでに、早くても2カ月以上かかります。
さらに、審判が確定し後見登記事項証明書を取得できるまでには、3~6カ月ほどの期間が必要です。
財産管理に不安がある場合は、家族信託の利用も含め本人の意思能力が低下する前に他の対策を講じることはできないか考えておくと良いでしょう。
成年後見は、次の理由で終了します。
以下で詳しく解説します。
被後見人が死亡すると後見の必要がなくなるので、成年後見は当然に終了します。
注意したいのが、この死亡には失踪宣告による死亡が含まれることです。
被後見人死亡による終了の場合、一般的に財産は相続人が継承することになります。
成年後見人が死亡した場合、死亡した成年後見人による成年後見の任務は終了します。しかし、後見そのものは存続することに気を付けてください。
成年後見人が死亡した場合、家庭裁判所は被後見人などやその親族、あるいはその他の利害関係人の請求により新たな成年後見人を選任します。
また、家庭裁判所は、職権で成年後見人を選任することができます。
成年後見人が法人である場合、死亡に当たるのは法人の解散です。
成年後見人は正当な事由がある時は、家庭裁判所に辞任の許可の審判を申し立て、それが許可されれば辞任できます。
辞任における正当な事由とは、病気や高齢など身体的な不調や、遠隔地に引っ越したために職務の遂行に支障をきたすことです。
辞任したことによって新たに成年後見人を選任する必要がある場合、成年後見人は遅滞なく新たな成年後見人の選任を家庭裁判所に請求する必要があります。
成年後見人が職務を遂行するに当たって、著しい不正な行為を行うなど後見を任せることができない場合があります。
そのような場合、家庭裁判所は成年後見監督人、被後見人、親族、検察官の請求によるか又は職権で、成年後見人を解任することができます。
不正な行為については、被後見人の財産の横領などが挙げられます。
成年後見人の解任後、他に成年後見人がいなければ、成年後見人の辞任の場合と同様に申し立てまたは家庭裁判所の職権により新たな成年後見人を選任します。
成年後見人が欠格事由に該当することが発覚したときは、成年後見人としての地位を失います。
欠格事由は次のとおりです。
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前述の理由で成年後見は終了しますが、成年後見人には次の事務処理の手続きが残っています。
成年後見人は被後見人の死亡を知った場合、「終了の登記」を申請しなければいけません。
「終了の登記」をしなくても、被後見人の死亡により後見は終了します。
その後、登記と実体のズレを合わせるために、成年後見人は「終了の登記」をする義務があります。
後見終了の登記は東京法務局に申請します。登記申請書と被後見人の死亡の事実が記載された戸籍謄抄本か死亡診断書の写しを添付します。
成年後見人の任務が終了したときは、2カ月以内に管理の計算をして財産目録を作成する必要があります。
管理の計算とは、成年後見人の就任開始から任務の終了までの期間に、後見事務の執行に関する全ての収入と支出を計算し、管理計算書と財産目録を作成することです。
後見就任期間中の財産の変動と現状を明らかにするのが目的です。
成年後見人は、残余財産の確定が2カ月以内に困難な場合、家庭裁判所にその期間の延長を申し立てることができます。
被後見人が死亡した場合、成年後見人は被後見人の相続人に対して財産を引き渡さなければなりません。
誰にどのように引き渡すのかは、相続人が1人か複数かにより異なります。
相続人が1人の場合はその相続人に引き渡します。
相続人が複数いる場合は、相続人全員に引き渡すのが原則ですが、通常は、相続人の間で代表を決めてもらい代表に引き渡します。
被後見人の死亡以外で後見が終了した場合は、後任の成年後見人に財産を引き渡します。
被後見人の死亡により後見は終了しますが、急迫の事情がある場合には、成年後見人は応急処分義務があります。
急迫の事情がある場合、被後見人の相続人などが処理できるようになるまでの間、成年後見人が処理をする必要があります。
急迫の事情とは後見事務の範囲であったもので、成年後見人が対処しなければ不測の損害が発生する恐れのあるものです。
応急処分義務に当たるかどうかは、ケースごとに個別に判断することになります。急迫の事情があることと相当性・妥当性があることが要件になっています。
成年後見人は被後見人の死亡などにより後見が終了した場合、家庭裁判所に後見終了までの後見事務の終了報告を行います。
報告する内容は、定期の報告と同様ですが「後見等事務報告書」「財産目録」「収支報告書」「預金通帳のコピー」などに加え、「後見の終了が記載された登記事項証明書」「財産の受領書」「引継報告書」も提出します。
報酬を受け取りたい場合は、終了報告と同時に報酬付与の申し立てをします。
ここでは成年後見制度の手続きに関するよくある質問に答えていきます。
いったん家庭裁判所に申立てが受理されると、取り下げるためには家庭裁判所の許可が必要です。
申立人が候補者としていったん推薦した方が、成年後見人に選任される見込みがなさそうだと思っても、その理由では原則として申立ての取り下げは認められません。
裁判所のホームページに以下の申立書の書式とともに記載例があります。
専門家に依頼せず自分で申立書などを記載する方は、記載にあたって不備のないようにするとともに、添付書類も全てそろえるよう気を付けましょう。
それぞれの裁判所によっては、申立時に別途他の指定された書類を提出しなければならないこともあります。事前に裁判所のホームページなどで確認するようにしましょう。
参考:裁判所「後見開始の申立書」
成年後見人選任の申立てを受け付けてから後見の開始までは、特に問題のない場合でも1~2カ月程度かかります。
さらに、成年後見人選任の申立てを行う前には申立準備期間として、必要書類の収集と申立書類の作成を行う必要があります。
必要書類の中には本人の戸籍謄本などが必要です。遠方からの取り寄せや何通も必要となることもあるので、時間に余裕を見ておいた方が良いでしょう。
他には申立て内容や裁判所での混雑状況などを勘案しておく必要があります。成年後見人選任の申立てから後見開始までの期間は、あくまで目安の期間と考えてください。
参考:東京家庭裁判所立川支部「成年後見人申立ての手引き」
本記事では成年後見人を選任する手続きと流れを詳しく解説しました。成年後見人の職務内容は、財産管理や身上保護など多岐にわたります。成年後見人になれる人に特別な資格は不要なものの、職務が重責であるため信用できる方でなければなりません。
また、成年後見は利用開始後は途中でやめられません。手続き前には制度利用の必要性について、十分に検討する必要があります。
成年後見人の特性を理解し、制度の有効活用を行うために制度利用の必要性も含め専門家の意見を聞いてみてはいかがでしょうか。
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化粧品メーカーにて代理店営業、CS、チーフを担当。
教育福祉系ベンチャーにて社長室広報、マネージャーとして障害者就労移行支援事業、発達障がい児の学習塾の開発、教育福祉の関係機関連携に従事。
その後、独立し、5年間美容サロン経営に従事、埼玉県にて3店舗を展開。
7年間母親と二人で重度認知症の祖母を自宅介護した経験と、障害者福祉、発達障がい児の教育事業の経験から、 様々な制度の比較をお手伝いし、ご家族の安心な老後を支える家族信託コーディネーターとして邁進。
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