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親が認知症などの精神障害により判断能力が衰えてしまった場合、本人自身が預金口座から入出金を行うことは難しくなります。そのような状態となってしまった場合、親に代わって子どもなどの家族が預金を引き出すことはできるのでしょうか。
本記事では、親が認知症になり銀行口座が凍結されてしまった場合に、親の預金を引き出すための方法を中心に解説します。将来に備えて親の預金を引き出す方法を知っておきたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
例え子どもなどの家族であっても、親の預金を勝手に引き出す権限はありません。
親の同意を得ていれば問題ありませんが、親が認知症などの精神障害になってしまうと有効な同意を得ることができないため、家族が引き出すことはできなくなってしまいます。
しかし、親に代わって家族が引き出したい場合もあるでしょう。
以下では、親に代わって家族が親の預金を引き出すための方法について、親の同意が得られる場合と得られない場合の2つに分けて解説します。
親が病気などで入院中であるものの、本人の判断能力が低下しておらず、同意を得られる場合には以下の方法で代わりに預金を引き出すことが可能です。
親の判断能力がしっかりしており有効な同意が得られる場合には、親の同意を得た上でキャッシュカードを預ってATMで引き出すことが可能です。通常の場合、この方法で親の預金を引き出しているケースが多いと思います。
まとまった金額を引き出すとき、ATMでは出金に限度額があるため、限度額のない窓口で預金を引き出したい場合があります。
しかし、子どもといえども名義が異なるため、窓口で親の預金を引き出す際には窓口担当者に親の委任状を求められます。そのため、窓口で引き出したい場合には親の委任状を作成する必要があります。
親の同意を得た上で、本人のキャッシュカードを借りて引き出すのであれば違法ではありません。
しかし、多くは同意を得たことの証明がないことから、後々勝手に引き出したとされるリスクがあります。
そこで、親の同意を得て代理人カードを作成する方法があります。代理人カードとは、親名義の口座のキャッシュカードで、本人名義のカード以外にもう1つ作成できるカードです。本人名義のキャッシュカードを借りる必要がなく、本人の同意を得て代理人カードを作成することから、勝手に引き出したとされるリスクは低くなります。
ただし、代理人カードは認知症などによって本人の判断能力が低下してしまった場合には使うことができなくなってしまう点に注意が必要です。代理人カードはあくまで本人の有効な同意ができることが前提で作成されるカードだからです。本人の判断能力が低下した後でも代理人として引き出すことができるわけではありません。
親の有効な同意を得ることができる場合であれば、親に代わって家族が預金を引き出すことは比較的簡単です。
しかし、親が認知症などに罹患して判断能力が衰えてしまうと、親の意思確認ができなくなってしまいます。そうすると、親に代わって家族が預金を引き出すことが難しくなります。
親の同意を得ないまま家族が勝手に預金を引き出す行為は違法行為です。この場合、返金を求められるなど、民事上の責任を負うことがあります。
なお、親の同意を得ずに子どもが預金を引き出すと、窃盗罪や横領罪が成立する可能性があります。しかし、親と子供の間の窃盗や横領については親族相盗例といって刑が免除されるため、刑事責任を追及されることは少ないでしょう。
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親が認知症などの精神障害になってしまうと、親の意思確認を行うことが難しくなります。さらに、銀行口座が凍結されてしまう場合があります。その場合、親の預金を引き出すことがますます難しくなってしまいます。
以下では、親の預金口座が凍結されてしまうケースと、凍結されてしまった場合に親の預金を引き出す方法について解説します。
親の認知症が進行し、判断能力が低下してしまうと、親の預金を勝手に引き出されても気づかず悪用されてしまうリスクが高まります。
昨今、高齢者を狙ったオレオレ詐欺などの組織的な犯罪が横行し、銀行は不正な出金への対策を強化しています。
認知症になってしまった場合、銀行は犯罪に巻き込まれて不正に預金が引き出されないよう、口座を凍結するのです。
口座が凍結されてしまうと、子どもが親の預金を引き出すことは難しくなります。
金融機関の口座が凍結されると、銀行窓口での各種手続きができなくなります。
具体的には、以下の通りです。
事前に認知症の対策をしていないと、上記の行為ができなくなり、本人の生活費や医療費・介護費用を子どもや親族が支払うことになります。
口座が凍結されると、ATMからお金を引き出したり預けたりすることもできなくなります。実際には、親のカードで生活費程度を引き出すのなら、金融機関にバレることはありません。しかし、短期間のうちに限度額いっぱいまで何度も引き出すなど、不自然な引き出し方をすると、金融機関から本人に確認の電話が入ることがあります。
一方、公共料金の自動引き落としや年金の振込などは以前と同様に続けられます。
親が認知症になる前に、対策を取ることが最も大切ですが、認知症発症後であれば速やかに成年後見制度の利用などの対策をおすすめします。
認知症の親の銀行口座が凍結になった場合、以下のようなデメリットが発生します。
それぞれ詳しく解説します。
口座が凍結されると、介護費用や生活費、医療費が引き出せなくなります。しかし、介護費用や生活費は支払わなければならないものです。そこで、子どもや親族がそれらを負担することになります。
子どもや親族にも自分たちの生活があり、その上で親の介護費用、生活費、医療費を支払うことは負担が大きく、子どもや親族が困窮する可能性があるでしょう。
凍結された口座が年金の振込用の口座だった場合、振込自体は特に問題ありませんが、年金を引き出すことはできずに年金がたまる一方です。
その場合、「年金の振込を凍結されていない他の口座に変更すればいいのではないか?」と思うかもしれませんが、年金の振込口座の変更は原則として本人以外できません。
例えば、父の年金が夫婦の生活費となっている場合、夫婦の生活は大変困窮する可能性があります。
認知症などにより意思能力が低下した場合、金融機関の口座が凍結されるだけでなく、金融商品の解約などもできなくなる資産凍結のリスクもあります。
資産凍結されると、不動産の売買や株式の売買、証券口座や生命保険といった金融資産も凍結される可能性があります。
金融資産が凍結されると、介護施設への入所や入院・手術など、高額なお金が必要となったとき、老後のためにと買っておいた金融資産が使えないという事態に陥り、子どもや親族が立て替え払いをしなければなりません。
定期預金の解約は、口座名義人本人が直接窓口に行き手続きをする必要があります。本人が窓口に行けない場合、普段、本人の介護などをしている家族が代わりに窓口に行っても、定期預金の解約はできません。
この場合も、上記の金融資産と同様に、介護施設への入所など、まとまったお金が必要なときに使えず、老後の備えとしての金融資産の役割を果たせません。
このような事態を避けるため、早いうちに認知症対策をする必要があります。
多くの方が代理人カードを持っていれば、親が認知症になっても口座からお金を引き出せると考えています。しかし、金融口座が凍結されると、代理人カードが使えなくなる可能性が高いでしょう。
そもそも、代理人カードは、認知症対策のためのものではなく、あくまでも本人に意思能力が備わっており、有効な意思表示ができることが前提です。
したがって、本人が認知症になって意思能力を欠いた場合、その前提がなくなるので、代理人カードが使えなくなります。
親が認知症になったことを銀行が知り、銀行が親の預金口座を凍結してしまった場合、このままでは親の預金を引き出すことができなくなってしまいます。
以下では、口座凍結の場合に親に代わって預金を引き出す方法を3つ説明します。
親の介護のため親の預金がどうしても必要な場合などは、銀行などの金融機関に事情を相談してみるのが良いでしょう。
2021年2月18日に、一般社団法人全国銀行協会から「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」という資料が発表されました。
これによれば、口座凍結がされた場合に本人に代わって家族などが預金を引き出すための方法として、成年後見制度を利用することが基本であることが示されました。
一方で、成年後見制度を利用しなくても一定の条件の下で本人に代わって家族などが預金を引き出すことができることが示されました。
参照元:全国銀行協会「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について」
以下では、成年後見制度を利用する方法と、日常生活自立支援事業を利用する方法について解説します。
認知症などによって親の判断能力が低下した場合、本人に代わって預金を引き出す方法として成年後見制度を利用する方法があります。
成年後見制度とは、本人が認知症などによって判断能力が低下してしまった場合に、本人に代わって成年後見人が財産を管理・運用する制度のことです。
成年後見制度については別記事で解説していますので、詳しくはそちらの記事をご参照ください。
日常生活自立支援事業とは、厚生労働省によれば、認知症高齢者、知的障がい者、精神障がい者などのうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助などを行うものをいうとされています。
日常生活自立支援事業を利用することによって、日常的な範囲での預金の引き出しなどの金銭管理について支援を受けることができます。
ただし、成年後見制度と異なり、あくまで日常的な範囲での預金の引き出しに限られることに留意が必要です。
親に代わって家族が預金を引き出す場合注意が必要です。例え親の同意を得ていたとしても、後で勝手に引き出したと疑われてしまう恐れがあります。
勝手に引き出したとされてしまうと、民事上の責任を負い返金を求められる場合があります。
このようなことにならないために、以下のことを実践するようにしましょう。
親の預金を家族が引き出す場合、お金の使途を他の家族や親族間で共有するようにしましょう。
なぜなら、親が亡くなった場合に預金が少ないと、相続人間で揉めるケースがあるためです。
お金の使途を親族間で共有することによって、後々の親族間トラブルを避けることができます。
親に代わって子どもが親の預金を引き出す場合、自分の口座に預金を移さないようにしましょう。
親の預金を引き出す場合、親のために預金を使うことが前提であるため、子どもが自分の口座に預金を移すと怪しまれます。
横領を疑われる場合や、贈与とみなされてしまう場合もあります。もし、贈与とみなされてしまうと、贈与税が発生してしまうため注意が必要です。
横領や贈与とみなされないためにも、自分の口座に親の預金を移さないようにしましょう。
先ほども説明したとおり、認知症などによって本人の判断能力が低下してしまうと、銀行は預金口座を凍結してしまいます。
預金口座が凍結されてしまうと、親に代わって預金を引き出すことが難しくなります。親の口座が凍結されてしまう前に対策をしておくことが肝要です。
以下では、親の口座が凍結されてしまう前にできる対策として3つを挙げて解説します。
対策の1つ目として、家族信託契約を締結することが挙げられます。
家族信託とは、家族による財産管理手法の1つです。
認知症などによって判断能力が低下することに備え、親の不動産や預貯金などの財産を信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法のことです。
家族信託は成年後見制度と並んで認知症対策として近年注目されている仕組みです。家族信託について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
対策の2つ目として、任意後見制度を利用することが挙げられます。
認知症対策として成年後見制度を利用することができることは広く知られています。
この成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
任意後見制度とは、本人が認知症などの精神障害になる前に、任意後見受任者と任意後見契約を締結します。その後、認知症などによって判断能力が低下した段階で家庭裁判所が任意後見人を監督する任意後見監督人を選任することによって効力が生じる後見制度のことです。
この制度によってつけられる後見人を任意後見人と呼びます。
任意後見受任者と任意後見契約の中で預金管理に関する後見事務の内容を定めておけば、本人が認知症になり口座が凍結されてしまった後も任意後見人が預金を管理することが可能です。
なお、任意後見制度を利用するためには、本人に判断能力があることが必要であるため、認知症になる前に任意後見契約を締結しておく必要があります。本人の判断能力が低下した結果、口座が凍結されてしまった場合には任意後見制度ではなく法定後見制度を利用する必要があります。
対策の3つ目として、金融機関の代理人指名システムを利用する方法が挙げられます。
本人の有効な同意が得られる間に代理人カードを作っておくことによって、親に代わって預金を引き出すことができることは先ほど説明しました。
しかし、代理人カードはATMで預金を引き出すために使うカードであるため、1日の引き出し限度額が50万円などに限定されます。
限度額以上に引き出したい場合は窓口で引き出す必要がありますが、この際に利用されるのが「代理人指名システム」です。
代理人指名システムとは、本人が親族を代理人としてあらかじめ指名しておくことにより、代理人が本人に代わって窓口で預金を引き出すことができるシステムをいいます。家族信託や任意後見を利用するよりも比較的簡便な手続きで利用できる対策です。
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認知症などにより意思能力が低下し、金融口座が凍結された場合、凍結を解除する方法は成年後見制度を利用する他はありません。この制度を利用すれば、後見人が本人の金融口座を管理することができます。
成年後見制度とは、認知症や精神疾患などにより意思能力が低下した方の財産管理や身上保護を、成年後見人が行う制度です。後見人は本人に代わって財産を管理し、生活費や医療費などの支払いをし、入院や介護施設への入所の契約手続きをします。
後見には、本人の判断能力の程度に応じ、後見・保佐・補助があります。
本人が判断能力を欠いている状態が通常の場合には後見を、判断能力が著しく不十分な場合には保佐を、本人の判断能力が不十分な場合には補助を使います。
成年後見の開始を家庭裁判所に申し立てすると、家庭裁判所は本人の判断能力、生活状況や資産、後見人候補者の職業・経歴、本人との利害関係、本人の意見などを考慮して後見人の選任を行います。
申し立ての際に、後見人の候補者を立てることはできますが、本人では契約などの法律行為や生活が困難である、あるいは財産の管理が複雑である場合には、家族などの一般の方ではなく、弁護士、司法書士、社会福祉士など成年後見制度の知識や責任について専門知識を持っている専門職が後見人に選任されることが多い傾向があります。
最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況」によれば、家族以外の専門職が後見人に選任されるケースが約81%、家族が選任されるケースが約19%と専門職が選任されるケースがほとんどです。
参考:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」
成年後見制度には様々なメリットがありますが、そのうち主なものは次の3つです。
成年後見制度のデメリットもいろいろありますが、主なものは以下の3つです。
以下では、親の預金に関するよくある質問として3つを挙げ、これらについて具体的に回答します。
親が認知症になってしまった場合であっても、子どもであれば親のキャッシュカードを入手することは簡単です。
認知症になる前に親の同意を得てキャッシュカードを預かっている場合もあるでしょう。しかし、親が認知症になってしまった後にキャッシュカードを使用して預金を引き出すと、後々のトラブルとなる可能性があります。
例え親の介護のために引き出した場合であっても、親が亡くなった後の遺産分割協議において親族間でトラブルに発展することもあります。
無用なトラブルを生まないためにも、認知症の親のキャッシュカードを使用して預金を引き出すことは避けるべきです。預金を引き出す際には、本記事で説明した対処法を実践してください。
親が認知症になると銀行口座が凍結される可能性があることは先に説明したとおりです。もっとも、親が認知症になったからといってすぐに銀行口座が凍結されるわけではありません。
銀行が本人の判断能力が低下していると判断したときに口座が凍結されることになります。
本人の判断能力が低下していることが銀行に発覚するケースとして、主に2つのケースがあります。
1つ目は、本人に代わって家族が預金を引き出そうとした際、認知症であることを銀行に説明することで発覚するケースです。
2つ目は、認知症の本人自身が銀行の窓口で預金を引き出そうとした際に、物忘れがひどかったり意味不明な言動が多かったりすることによって銀行が認知症の疑いを強めたケースです。
親が亡くなった後、親の葬儀費用などのために親の預金を引き出したい場合があります。
この場合に家族などが親の預金を引き出してしまうことがありますが、トラブルになるため控えましょう。
なぜなら、親が亡くなると相続が開始し、親の預金は遺産として遺産分割協議の対象となるためです。
なお、以前は預金は遺産分割の対象にはならず、当然に分割されるとされていましたが、平成28年に最高裁判決によって遺産分割の対象となるとされました。
遺産分割協議の前に親の預金を引き出してしまうと、相続人間でトラブルとなる可能性があります。よって、親が亡くなった後に親の預金を引き出すことは控えるべきです。
親が元気なうちは親の同意を得てキャッシュカードを預かっている方も多いでしょう。
しかし、親が認知症になった場合に引き続き親のキャッシュカードで預金を引き出すことは、後々のトラブルを生む可能性があります。
また、認知症により口座が凍結された場合には引き出しができなくなります。親が認知症になった後に親の預金を引き出すためには、正しい手順を踏む必要があるのです。
将来、親が認知症になった場合に備えて親の預金を引き出すための対策を準備しておきたい方や、親の銀行口座が凍結されて困っている方は、専門機関へのご相談をご検討ください。
ファミトラでは、親が認知症になってしまった場合に親の預金を引き出すための正しい手順について熟知したスタッフが適切なアドバイスをいたします。
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